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動物たちと戯れることしばらく。
自分もおやつを食べるべく部室へと戻ることにする。
もちろん入室前には軽く衣服を叩いて動物の毛や花粉を落とす事も忘れない。
「ただいま戻りました」
「おかえりー」
鼻声の2人の声が返ってきた。
睦峰様は窓の外で双眼鏡を覗いているみたいだ。
ここが学園内ではなく、彼がイケメンではなかった場合通報の憂き目にあうこと間違いない。
「黄金先輩、変わった動物が野生化しているのですね」
「あの子らいつの間にか増えるんや」
この増えるというのは繁殖するという意味ではないのだろう。
一体どこから来ているのか謎だ。
そのうち弱肉強食の社会になりそうだ。
「あの子達の存在は先生方はご存知なのですか?」
「さ~どうなんやろ?」
敷地が広すぎて庭の隅々までは把握していなくてもおかしくはないけれど…
気付かれないにしても対象の動物が大きすぎませんか?
むしろ黄金先輩はどうやって知ったんだろうか。
*****
「お兄様、今お時間よろしいですか?」
帰宅後、学園の先輩でもあるお兄様に聞いてみることにした。
「大丈夫だよ桃華、どうしたの?」
お兄様の和装はやっぱり素敵すぎて眼福です。
「学園のお庭に野生の動物がいるのはご存知ですか?」
何が、とは言わずに聞いてみる。
「野良猫が迷い込んでいたのかい?」
猫もいました。
「もっと大きな動物がいたというお話を聞いたことはありませんか?」
たとえばゾウとか。
「大きな動物……そういえば昔一度だけ熊を見たと言っていたクラスメイトがいたかな?」
え、熊も出るんですか?
「熊……ですか」
これは他にもまだいるのではないかな?
「心配いらないよ桃華、人の気配がするところには出てこないだろうから」
自ら庭の奥に足を運んでいますとは言えないな。
「そうですね…ありがとうございますお兄様お休みなさい」
「いえいえ、おやすみなさい」
おそらく動物たちの存在は生徒たちの間では七不思議くらいの扱いなのだろう。
まぁあれだけ広い上に数か所に及ぶ庭なのだから遭遇する確率は限りなく低いだろうし、知られていないのもしょうがないのかもしれない。
………やっぱり黄金先輩はどこで知ったのだろう。
*****
「……モモたちの部活何やってるんだ?」
翌日、桃城くんに動物たちと戯れたことを話したら引かれてしまった。
「これも活動の一部なのだそうです」
「ゾウって……まじ?」
普通はいませんよね。
「まじですよ、お兄様のお話では熊もいそうですね」
「それって安全面大丈夫なのか?」
確かに野生の熊っていう響きは危ないですよね。
や、ゾウのが危ないけれども。
「人の多いところには出てこないらしいので日常生活には関わってこないと思いますよ」
学園の庭の奥、というより森に入るのでなければ。
お互いの部活の話から話題はころころと移り変わり、しばらく。
「ところでモモ、職業レポートの課題どうするんだ?」
「……両親の仕事についてでしたよね」
課題の話になった。
進路を見据えるべく、身近な人の仕事をしる。
そんな名目の元出された課題なのだけど……
うちの仕事、なんてかいたらいいのだろうか。
期限は夏休み明け。
後回しにするのはよくないか……




