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私がこの学園に入学してから早1ヶ月が経とうとしている。

学園生活にもなれた私達はとある学生の義務ともいえる行事を目の前にしていた。

それは学生にとっての一大イベント。



定期試験の季節です。




*****


「モモーーー無理だ!俺には!無理だ!!!」

試験に備えるべく部活動はお休みになり、私と光それから桃城君は我が家で勉強会なるものを開いていた。

「ちょ、煩いよ大樹」

「桃城くん頑張りましょう?」

ウガァァァと、可笑しな奇声をあげながら畳に倒れる桃城君をそのままに机の上の問題に取り組む。

これなら、今回の試験は問題なさそうだ。


「なんで二人ともそんなスラスラ解けるんだよ……」

ついにはシャープペンを置いてしまった桃城くんがジトッと私たちの手元を見ている。

「僕はスラスラってほどでもないよ」

光は苦笑と共にこっちを見る。

「私は勉強だけが取り柄なので」

運動はそこそこできるってくらいだから、昔から頑張っていたりする。

ちなみに『水無月桃華』は勉強は出来なかった。

下から何番目どころじゃなく、一番下だった。

だからこその努力で、私も勉強自体は嫌いじゃない。

もしも家が取り潰されても己の実力で社会を渡っていけるように。


「(だけって自己評価低すぎるってモモ)」

「(桃華って時折ネガティブだよね)」


二人の小声の会話は聞こえないけれど揃って苦笑しているのはわかった。

「なーモモ英語全然わかんねー教えてくれ!」

「僕もここの数式良く分からないから解説してほしいな」

二人の言葉に頷き答える。

……数少ない人の役に立てているこの瞬間も勉強が好きな理由なのかもしれない。



*****


試験勉強期間一日目、部活が休みになった私たち三人は放課後の教室でいつもよりも長く話していた。

「テスト勉強とかしたことねーよ」

「え……大樹ここの入学試験どうしたの?」

「スポーツ推薦?っていうので入ったから良く分からん」

私と光は一般入試という形をとって入って来てますもんね。

実際入学時の試験は合否にあまり関係なく、クラス分けの際に利用されるだけだということを知っていた私としては緊張も何もなかったのだけど。

ちなみに成績ごとにクラスがわけられるのではなく、クラスの偏差値が大体平均的になるようにクラスは編成されているらしい。

ソースは『知識』からなのでそういうものなのだろう。

むしろ試験の成績が合否に関係あるのなら『水無月桃華』は入学すらできていないだろうし。


もろもろの会話は忘れたけれど、ともかく桃城君の溜息から始まった試験に関しての会話から勉強会を開くこととなったのだ。




うちの車に乗り我が家へ招待すれば、組の一同が門から玄関まで花道を作って出迎えてくれた。

……光以外の友人を初めて連れ帰ったからっておおげさじゃないだろうか。

歓迎というよりは威圧感の方が凄まじいということになぜ気付かないのか……。

「うっわーモモん家でっか!!!!人多いなー!」

桃城くん、予想外の感想に驚きですよ。

「大樹……将来は大物になるよ」

光はすごく嬉しそうだけど。


「「お嬢、お帰りなせえ!!!!」」

「ただいま帰りました、皆さんお仕事に戻ってください」

わらわらと解散していったお兄さんたちを見送り、玄関へと進む。

「お嬢、光坊ちゃん、ご友人の方もお勤めご苦労様です」

先日の護衛件荷物持ちをしていてくれた方が残り、客間へと通してくれました。


「ありがとう、何かおやつはある?」

「今日は紅茶のシフォンケーキと豆大福がありますぜ」

「両方人数ぶんお願いできる?」

「へい!」


廊下の曲がり角に何人か隠れてるのがちらちら見える。

どうにも桃城くんが気になるらしい。


「そこにいる五人、こっちに来なさい」

声をかければ恐る恐るといった様子で出てくる。

「お、お嬢すみません」

「別に怒ってないから」

苦笑と共に返せばほっと息をついていた。

「一緒に勉強したいの?」

「いや俺たち頭の出来はからっきし何で」

「勉強なんてしたことないっす」

胸を張ることじゃないからね?

「桃城くんが気になったってところね?」

「「さすがお嬢その通りッす!」」

だから胸を張らない。


「ん?俺??」

廊下の声が聞こえていたらしい。

襖をあけて桃城くんが顔を出しました。

「すみませんお騒がせして」

私の言葉の後に続いてお兄さんたちも頭を下げている。

「いいって!お兄さんたちも頭上げてくださいよ!」

奥で光がくすくす笑っているのが見える。

この状況を一人楽しんでいるらしい。

「俺は桃城大樹っす、モモのクラスメイトやってます」

「大樹坊ちゃん、お嬢をよろしく頼みます」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」


体育会系のノリが合うのか、急速に仲良くなっている。

桃城君はコミュニケ—ション能力が高いですね相変わらず。

おやつを取りに行ってくれていたお兄さんが戻ってきたところで解散となりまして私たちは勉強にとりかかたのでした。



*****




それから定期試験期間は毎日我が家で勉強会が開かれ、楽しく勉強を進めた。

試験明けの放課後は桃城くんが久々の身体を思いっきり動かせる部活動に弾む足取りで向かっていき、私と光は緑化委員会(仮)の部室へと向かいいつも通りのお茶の時間を楽しむ、そんな日常へ戻った。


ちなみに睦峰様は幼馴染たちと三人で勉強会を開いていたらしい。




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