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「ったくもう……桃華の事心配して大樹とかも探してくれてたんだからね?」

ふむ、だからさっき睦峰様が、光たちって言ったのか。

「桃城くんにも謝らないとです」

とりあえずメール打っておきましょう。

「あとは桃華のお友達の女の子たちね」

「……あの人たち…こわい」

睦峰様が腕をさすって僅かに青ざめている。

……あの子たちにもお礼を言わないとね。

「メール打っておきます」

言いながら携帯を開き何通か送れば、彼女たちでメールを回してくれるとのこと。

統率のとれた友人たちだ。

桃城くんにももちろん送った。

部活にも遅れているだろうし、今度野球部のみなさんにも挨拶にいかなくては。


「優も、ありがとね」

「ご迷惑をおかけしました」

重ね重ね申し訳ない。

「……別に…話って?」

またも首を傾げられる。

「あ……えーっと…」

……そういえばそうだった。

さっきのことも含めて話をしようと思っていたのに、本題を忘れかけてた。

ただ、光がいるのがなー……

ちらっと様子を窺えば、こっちはこっちで首を傾げていた。

「俺いないほうがいい?」

正直に言うとそうだけどそのしょぼんって顔が……

睦峰様に視線を向けるとおそらく察してくれたのだろう頷きが返ってきた。

「……いいよ?」

睦峰様はたぶん何について話すのかわかってるだろうからこの人がいいなら、いいのかな?

「なら光も大丈夫です」

「いいの?ありがとう!」

一転、にっこり笑ってますね。

気のせいだとは思うけどさっきのしょぼんはフェイク?

まさかの監視とかそういう目的じゃないよね?

私の幼馴染がそこまで黒くなってない事を信じよう。


話をするなら移動しようか!という光につれられ向かった先は部室棟の奥。

『緑化委員会(仮)』の部室でした。

睦峰様はきょろきょろといつになく落ち着かない様子。

その気持ちはよくわかる。

つい何週間か前に私達も味わったそれだろうし。


「「ようこそ、緑化委員会(仮)へ」」


先に入った光と中にいた黄金先輩の声が聞こえて、私の前を歩いていた睦峰様が若干後ずさった。

……怪しさ満点ですもん。

「……水無月さん…?!」

完全に怯えた目が振り向きましたよ。

光と黄金先輩すごく怖がられてる。

「すみません…気にしないでください」

どーぞどーぞと中から手招きしているのを見て苦笑がこぼれる。

胡散臭い笑顔が二つならんでいるけど……

光……貴方そんな人だったっけ?


私と睦峰様が短く言葉を交わす間に光が黄金先輩に事情を話してくれていたらしい。

プラスチックの像を模ったじょうろを片手に先輩は扉へと向かう。

「なんや内緒の話するんやろ?先輩は水やりツアーに行ってくるさかいごゆっくりしてってな~」

「「ありがとうございます」」

私と光の声が揃い、睦峰様がぺこり。

ひらひらと手を振りながら先輩は出て行った。


いつものように光がお茶を入れて、私がお菓子を出す。

それぞれ定位置に座って、辺りを見回している睦峰様を開いてる椅子へ招く。

「……すごい」

「でしょう?部室が気に入ったんだよ~」

今日のおやつはチョコレートケーキ。

中心の生チョコが美味しいことで有名な人気商品だ。

2人にも切り分けて、自分の分を手を合わせてから食べ始める。

うん、やっぱり美味しい。


「で、桃華は食べてないで話どうしたの?」

睦峰様と私がおやつを頬張っていたところ、光の一言で動きが止まった。

睦峰様の視線がケーキから私にうつる。

「話というのはですね…あのことなんですけど……」

やっぱり言葉が濁ってしまう。

そもそも婚約していることを少なくとも中等部の間は秘密にしませんかって話をするつもりだったのに話と同時にばれるという元も子もない状況。

少しの疑問を瞳に映した睦峰様が頷く。

「少なくとも中等部にいる間は秘密にしませんか?」

「……うん…でも何でいま?」

確かに、言葉にしなくとも今まで二人とも誰にも言わなかった。

聞かれていないし、話す必要もないというのがお互いの理由なのだろうけど。

だけどわざわざ私が秘密にすることを決めようと言いだしたのがなぜか、と。


「また怒られそうなのであまり言いたくはないのですが……」

いったん話を区切って光を見る。

「話に口を挟むことはしないよ?」

何の話をしているかわからないはずだけど光は詳しく聞き出そうとするような人ではないからその辺は信頼している。

……だからこそ隠していることは心苦しいのだけど。

「怒らないでくださいね?先ほどまでいなくなっていた理由なんですけど……少々呼び出しを受けていたんです」

「……だれに?」

睦峰様の顔が少しほんの少しの変化だけれど険しくなった。

もしやとは思うけど……怒っている?

「知らない人たちです」

「……複数の?」

「う……はい」

私のことに興味などないと思ったのだけど……

予想が外れたのか二人から向けられる視線がいたい。

「……光…交代」

ん?

「呼び出しについて、ね?了解」

これは……まずい。


「さ、桃華?話してくれるよね?」

「怒らないって言ったのに…」

「怒らないとは言ってないよ」

……確かにそうですけど!

変わらず笑顔の光と無表情の睦峰様を前にあらがえるわけもなく…

お土産に入っていた手紙の件から全て話すことになった。


*****


「……あのスーツの人…水無月さんの…」

ここ数日の廊下における異様な雰囲気に納得がいった、というところか。

「護衛、というか虫よけ?らしいです」

「なんとなく察しはついてたから今日一日張り付いてたのに…いつの間に手紙なんか」

光はぶつぶつ言ってるけど、やっぱり意図してくっついていたのか。

「……ついて行っちゃ…だめ」

「う、売られた喧嘩は買わないと舐められるっておじいさまが……」

あ、これは事実です。

だから体育館の裏でもなんでも果たし状を受け取ったなら、行かなくては。

「今回は明らかに喧嘩売られたわけじゃなかったよね?」

光の屁理屈は通じないよっていう笑顔が毎度のことながら……

「桃華、次回からは一人で行くなんてことは絶対しないって約束して」

「一人で行くことはしません」

「よし」

どうやら光が発言するのはここまでらしい。


「……呼び出された時の…断り方が……理由?」

睦峰様との会話に戻る。

「はい、言ってしまった以上守らなくてはと」

やっと本題に入れる。

「……やっぱり…いや」

…………!!!

断られてしまいました?

「なぜ、ですか?」

「……うちの名前…同じこと……起きなくなる…と思う」

確かに、睦峰家に喧嘩を売ることができるような家はそんなに多くはない。

でも……ほんとうに?

さっきの人達はそう言うことがあまり関係ない部類の人のように思った。

睦峰の名前と同様、水無月の名前も敵に回すことはできないと思うけどそれでも行動に出た。

もしも私と睦峰様の関係が知られれば、それこそ迷惑をかけてしまうと断言できる。

「確実に睦峰様に迷惑がかかります、巻き込めません」

「……いい…気にしないで」

気にしないという選択がとれるわけないのに。

「無理です」

「……だめ」

「危害があるかもしれないんですよ?」

「いい……水無月さん…強情」

埒が明かない。

無言で見つめ合う結果になってしまった。


「…二人とも落ち着こう?」

光が真ん中でおろおろしている。

「……光に話す」

「え?」

光の戸惑った声が聞こえたけど、睦峰様の発言の方が問題だ。

「……いいでしょ?」

睦峰様の方が強情だと思う。

そもそも本人を前にしてダメだとか言えるわけがない。

無言を肯定と受け取ったらしい。

「……水無月さんと婚約した」

さらっと言ってくれましたね。

光が固まったじゃないですかフォローはしないけど。

私はこの後、松宮様達にもばれるのかと思うと気が重い。

そっちの方が割と面倒な予感がするし。


「えーっと……二人ともそんなに仲良かったっけ?」

ひとまず落ち着いたのかな?

勤めて冷静な突っ込みをする光の立ち直りの速さに驚いた。

でも…戸惑う反応が当たり前だと思う、だってまだ中一ですよ私たち。

私的にもまだまだその手の話はご遠慮したいお年頃なのに。

「……家の繋がり」

「お互いの気持ち次第で破棄する約束は個人的に結んでいます」

あくまでも、私たちの意思とは関係ない。

それが伝われば問題ない。

「そ、うなんだー……お祝いする?」

「「いらない(です)」」

最後の問いかけは軽い調子だったから光も元の調子に戻ったかな?





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