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「さ、訳を聞かせてもらおうか?」

「……う」


余っている席に座った草薙先生の尋問スタート。

これは……話すしかなさそうなかんじですね。

しょうがない、腹括りましょう。


「お手紙をいただいたので来ました、以上」

「こら」

事実をありのままに述べたのにダメですか。

でも草薙先生、それ以外は本当に何もなかったんですよ?

いじめの呼び出しとかでもなかったし。

「……中学生は学生の本分に励むべきだと言ったら引いてくれました問題ありません」

「水無月さん……君はもう少し危機感ってものを身に着けなさい」

危機感、光にもよく言われるけどいまいちピンとこない。

危機感も何も私は水無月家の娘であってそれ相応の護身術は身についている。

奢っているとかそういう事ではなく、今回だって敵わないと思えば背後にあった窓から逃げるつもりだった。

ここが三階だとかその辺は些細なことだし。

窓の下すぐのところには幹の太めな木がいるから掴まることもできそうだと思った。

私にとっては落ちて死ぬような高さじゃない。

危機感とは?

人の気配に疎いわけでもない。

殺気には組でも一二を争うくらい敏い。

それで何を危機だと思えばいいのだろう?

彼らの一人が拳銃を持っていたのなら危険だったのかもしれないけど、ここが学び舎である以上そんなことはないと思う。


「……わかりました気をつけます」

返事はする。

だってそれが一番早くこのお話が終わる方法だから。

「口先だけって感じだね」

「気のせいですよ」

にこっと笑って見せれば何度目かの溜息を吐かれた。

この人本当に光と同じにおいがする。


「危機感、という単語では納得してもらえないみたいだね」

確かに納得はしていない。

よくわからないからできるわけない。

「さっき俺がどんな気持ちだったかわかる?」

「先生の……気持ち?」

さっき、とは私を見つけた時のことですかね?

「人気のないこの廊下で複数の男子生徒とすれ違った時だよ」

……私の名前を出して何かを話していたとか言っていたっけ。

「もしものことがあったら、って血の気が引いたよ」

心配した、ということ?

「君は女の子なんだから一生残る傷なんてシャレにならない」

「……そうですね」

その時の先生の気持ち。

想像するのは容易い。

多少なりとも面識のある人が危険な目にあっているかもしれない。

そんなときの気持ち。


「君一人だけの問題じゃないんだよ?」

「納得、しました」


それは私が悪い。

先生には心配をかけてしまった。

申し訳ないことをしたと思う。

「解ってくれたならいいよ、次はないからね」

「……はい」

よしよしと、頭を撫でてくれた。



*****



それから先生が教室棟まで送ってくれた。

お礼を言って別れ、辺りの様子を窺いつつ進む。

教室に戻って鞄を取らないと。

部室へ顔を出すにしても帰宅するための準備がいる。

「……水無月さん?」

びくっと肩が跳ねるのをそのままに声のした方向へ顔を向ける。

「睦峰様……でしたか」

光だったらどうしようかと。

「……どうか…したの?」

こてんっと首を傾げられた可愛い。

無表情だけどこの人あざとい。

「少し話しませんか?」

「……ん」

さっきの宣言の事もあるし。

それに気分的にもまだ怒られる時間を伸ばしたい。

帰ろうとしていたらしい睦峰様が教室までついて来てくれる。

少し歩かせてしまうのは申し訳ない。



「ぁ……」

なんだろう?

用事でも思い出したのだろうか。

「お時間なさそうですか?」

私の問いかけには首を横に振ることで答えられた。

違うらしい。

「……さっき光達…探してた」

あー……やっぱり探されているのか。

教室に戻る間に見かけなかったということは他の場所を探しているとか?

鞄にいれていた携帯を見る。

「……着信45件」

声に驚きの色が混ざっている気がする。

私を見る視線に混ざっているのは憐れみかな。

「睦峰様……先にこちらを消化してもいいですか?」

頷きを返されたので、光へと電話をかけることにする。

1コール目の途中で出るって……


*****



居場所を告げてすぐに現れた光に散々怒られることしばらく。

近くにいた睦峰様がおろおろとしていたのには更に申し訳なく思った。

おろおろしているような気がする、という程度の変化だったからたぶんだけど。

「ったくもう!桃華この事は杏璃さんにも報告するからね?」

「……!!!光っそれはだめです!」

お兄様にばれたら怒られる。

お兄様にばれることだけは絶対ダメだ。

特に、光から話がいくということ自体よろしくない。

私の寿命の危機。

お兄様は絶対に怒らないけれど、とてもとてもとても悲しい顔をして諭される。

怒られるより何より一番私に効果のある方法がそれだとわかっていてやっているのだと思う。

実際、それが事実だから私に加わるダメージは易々とライフを0にするのだ。

……一週間は立ち直れないくらいに。


「桃華に散々言ったのに聞いてくれないからしょうがないよね?」

「ちゃんと!今回は聞いていました!それに先ほど草薙先生にも怒られたのでちゃんと反省しました」

「草薙先生?」

「はい、心配かけることをしてはいけないと言われたので次からはもっと思慮深く行動します」

「……はぁ、次はないからね」


よかった!!!




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