表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/43

16

週の明けた登校日。

中等部の校内はいつもより賑やかだ。

自分達の校外学習先の話を他クラスの友達と報告しあう声やお土産を渡す人達で廊下も混雑している。


ここまで来るのがまず大変だった。

校門に着けられたら車からおりて教室棟まで歩く間にいろいろな人からお土産を渡された。

関わりのない上級生も何人かいたし、話したことのない人達からも。

……お家の付き合い、ね?

すぐに両手は塞がってしまい、人だかりで前にも進めなくなったあたりで運転手さんとは別の護衛担当の組員が荷物持ちに来てくれた。

そんなわけで教室へと向かう廊下を進む今も背後に控えてくれている。

オールバックに固めた頭と黒いスーツ、先の尖った革靴そして何よりその厳つい顔。

あからさまにそっちの人ですね。

事実そうなんですけども。


「お嬢、授業の間にこの荷物を家に持って行きやすね」

「はい、お願いします」

「にしても凄い人気っすね~流石は俺達のお嬢っす」

「……ありがとう?」


いつもの何倍も時間をかけて教室にたどり着いた。

ここでひとまずお別れだ。

90度のお辞儀のあと帰って行くのを見送りやっと教室に入れる。

……彼が進む先の人垣が割れていたのはあの見かけのせいだろうな。


「モモおはよーっす!朝から大変そうだったな~」

「おはようございます……疲れました」

席に着けば桃城くんの机も凄いことになってますね。

さすがの人望です。



******



「二人ともお土産おおきにな~これお返しやで」

「「ありがとうございます」」


お昼にはサロンに顔を出してお土産を配りお返しをもらい、と忙しく過ごしました。

各授業の間には教室に来る見知らぬ生徒たちからお土産をもらいました。

ついでに連絡先を聞かれたり彼氏の有無を聞かれたりしたけど。

ちなみに、そういう件は光や桃城くんがどこからかやって来ては相手をしていた。

ご苦労様です。


そして放課後、『緑化委員会(仮)』の部室に顔を出せばいつもと変わらない静かな空間に胡散臭い笑顔を装備した黄金先輩がいた。

光とそれぞれお土産を渡せば先輩からもお土産を渡された。

先輩はいったいどこへ行ったのか……お土産の中身は幾何学模様のブレスレット。

光の方には色違いのリストバンド。

「それ魔除けになるらしいで?」

「そうなんですか……先輩どこに行ってきたんですか?」

「どこやと思う?」

もらったお土産の中で中身を見たのはこれが最初だ。

光のはまだ膝の上にいる。

他の不特定多数の人達からのお土産は開けずに家に送ってもらった。

たぶん今頃過保護なたくさんの兄たちが危険がないか調べていることだろう。


先輩からのブレスレットをひとまず身に着けてみた。

……何で出来ているかわからないけどちょっと重い。

「桃華チャン着けてくれたん?おおきに」

「こちらこそありがとうございます」

礼を返せば毒のない笑みが返ってきた。


二人が話に戻るのを聞きながら次の袋に取り掛かる。

光からは豆かんか美味しそう。

私が和菓子を好きなことを知っていて選んでくれているのが伝わる。

早く食べたいけどきっと冷やした方が美味しいから我慢。

「光、ありがとうございます」

「いえいえ、その顔は喜んでくれたみたいだね」

そんなに解りやすい顔してたのかな?


さて、あといくつかお土産が手元にある。

一つは睦峰優様から。

睦峰様に関しては、私たちの関係上私も彼には個別で買ってきていた。

もう一つは松宮輝石様から。

こっちは予想外だった。

一応、夕食に呼ばれたお礼として買ってはあったけど。

そしてもう一つが赤城龍雅様。

これは完全に予想外。

買い忘れのために買ってあった物を渡したけど。

……マンボウの小さいお人形だったのは申し訳ないと思う。

ちなみに、だけど草薙先生にもお土産は渡した。

お礼は後日と言われたけど別にいらない。

お礼が欲しくて渡したわけじゃないし。


さて、どれから開けようか。

この三人は同じクラスだし行き先は同じはずだ。

……そもそも行き先って鳥取砂丘だったと思うけど何を買ってきてくれたのだろう?

「桃華?難しい顔してどうしたの?」

「……いえ、どれから開けようか迷ってます」

顔に出やすくなってるのかな?

家の中以外では気をつけているつもりだったんだけど。

「そんな難しいもん入っとるん?」

「わかりません」

黄金先輩にも苦笑されました。

「それ輝石達からのでしょ?」

「はい」

「(……龍雅のやつが不安とか?)変なものはないと思うけど」

そういえば光も三人からもらってましたっけ。


上から開けようかな。

一番上は睦峰様からもらった物。

クッキーか……睦峰様が選んだものなら確実に美味しいだろう。

味に期待ですね。

次は松宮様からのお土産……モアイ?

モアイの置物ですか?

ハイセンスなおみやげですね。

「それめっちゃかわええやん」

「……いります?」

「や、お土産なんやから持って帰ったり」

「はい」

黄金先輩の可愛いいただきました。


次は赤城様からのお土産ですか。

……ウミガメの赤ちゃんのお人形?

普通にかわいい。

しかも手触りがとてもいい。

「桃華嬉しそうだね、それ誰から?」

「もふもふです。赤城様からいただきました」

「(まじか)……龍雅からか~」

こないだまでの態度と今回のお土産とちぐはぐだけど可愛いからどうでもいいか。

お土産はありがたくいただきます。


……でも一度、話してみた方がいいかもしれない。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ