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そして問題の昼休み。

始まると同時にやってきた睦峰様に拉致されました。

赤城様は松宮様に任せてきたとか。


中庭の奥へと足を進める睦峰様についていくと、木々に隠されたガゼボがありました。

屋根の下にはテーブルとイスもある。

こんな場所があったなんて…入学早々よく知っていましたね。


お互いに向かい合って座りランチボックスを開く。

途中で買った紅茶をカップに移し飲んでいれば、睦峰様の視線に気付いた。

「あの、話とは何ですか?」

静かに見ているだけだった睦峰様の視線がテーブルの上に落ちる。

……話しにくいことなのだろうか?


「…昨日……水無月の頭首がきてた……」

「はい、おじい様が何かご迷惑をかけましたか?」

「……あの人はうちの祖父と…仲がいい」

「?はい」

「……古くからの…交友って」


睦峰様は何が言いたいのだろう?

言い淀んでいる?


「お互いの…家の繋がりの……強化を、と」


ん?

話が見えてきたような気がする。


「…昨日……婚姻の約束を」

ちょっと待って。


「もう一度言ってください」


「婚姻の…約束を……した」


おじい様。

家に帰ったらお母様に言いつけますからね。


「私と睦峰様が、ですか」

こくん、と頷かれた。


そうですか。

それは確かに二人でないと話せませんね。

赤城様にも聞かれるわけにはいかない。

周囲に知られるにしても、私たちが知ってからでなくては。


「…そうですか、睦峰様はどう思いますか?」

「……止められず…ごめんなさい」

「いえ、それは無理でしょうからいいです」

「……水無月さんが…構わないなら…しばらくは」

「そう、ですね……お互いに好きな人ができるまでは…このままにしておきますか」


話がひとまず終わってからは、お互いに昼食を摂ることに集中する。

ぽつぽつと、ゆっくり会話を交わしつつ時間をすごした。


……それにしてもおかしい。

私の婚約者はこの人ではないはずだ。

それに婚約者が決まるのは二年後、三年生に上がってからのはず。

二重で交わしていたということ?

おかしい。

どうして今、睦峰の家と婚約を結ぶことになった?


…私の知識と違う。



午後の授業はこの差異を思考することに当てていたら、桃城くんに体調を心配された。

……そんなにぼうっとしていたのかな。

部室に移動するべく光と歩きつつふと、周囲の喧騒に目を向けてみた。

と、真っ赤な髪の目つきの悪い人と視線が交差する。

赤城龍雅様、ですか。


そのまま逸らすわけにもいかないので、会釈をして通り過ぎようとしたら何故か近づいて来られた。

え、やだこわい。

その顔で近寄らないでください。


「おい、水無月桃華」

おいってもう少し呼びかけ方があるでしょうに。

「…はい」

ちょっと声色に嫌々感が出てしまいましたが気にしない。

だってほんとに嫌なんだから。


「優に近づくな」

またそれですか。

できることなら、貴方方には関わりたくないんですよこちらとしても。

「赤城様が睦峰様をとても大切に思っているのはわかりました」

思っても言えませんけどね。

淑女の礼儀です。


「俺は近づくなと言ったんだ」

知りませんよ。

そんな私に怒らないでくださいって話でしょう?


「……ねぇ、それは桃華に失礼なんじゃないかな」

そう言えば、今回は隣に光がいたんだった。

うげっと口にしそうになるのを抑えて隣を見ればどうやらこちらもお怒りの様子。

あぁ……私のことを心配しての事だってことはわかっているけど…

面倒なことになり始めた予感。


「久東……お前もか」

お前もかって何?

「……ブルータス?」

「…桃華、今はぼけてる場合じゃないよ」

あら、口に出していましたか失敗。


「ちっ……とにかく、お前の魂胆などお見通しだ!」

言い置いて歩き去るんですか。

言いたいことだけ言っていなくなりましたね。

……はぁ、もう何ですかこの人。


「ねぇ桃華、龍雅になにかしたの?」

光まで眉間を寄せないの。

赤城様の後ろ姿を睨まない!

「いえ、心当たりはないです」

初対面の時からにらまれましたから。


やれやれと、内心で溜息を吐きつつ光を促し歩く。

部室でおいしい紅茶が待っていることだし、はやく行こう。

綺麗な花に囲まれてティータイムです。

心の安息を求めて!




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