表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/43

私が自分のおかしな身の上に気付いたのは三歳のころだったと思う。


絵本を読んでくれるお兄様の姿を見ていて覚えた既視感。

疑問に思った瞬間から浮かび上がってくる記憶……

記憶の中のお兄様は〝画面の向こう側”で優しく微笑んでいた。


それが、この世界は乙女ゲーム『君は僕のプリンセス』通称『君プリ』の世界であると気付いた瞬間だった。


私の名前は『水無月桃華(みなづきとうか)

水無月組の現組長の孫娘である。


私の知ってる記憶が確かならこの名前のキャラは主要キャラだ。

攻略キャラのほとんどのルートに登場するほど、といえばわかるだろうか。


もちろんヒロイン、というわけではない。

ポジション的には攻略キャラの妹であり許嫁であり幼馴染というあからさまにことごとくヒロインの障害物となるキャラなのだ。


障害物、またの名を当て馬もしくは悪役。

どう考えても碌な末路じゃない。


自分の記憶がどこから来るのかはわからないけど……

おそらく私は昔この世界『君プリ』のプレイヤーだったのだろう。

前世の記憶はないけれど、この世界のヒロイン視点いやプレイヤー視点の記憶なら知識としてたくさんある。

相当やりこんでいたのかな?

まぁ……思い出せない前世の記憶なんて今はどうでもいい。


問題は私のポジション。

水無月桃華という私の当て馬人生をどう改善するかだ。


私に優しくしてくださるお兄様に嫌われるのも、割と仲良くやっている幼馴染に嫌悪の視線を向けられるのも勘弁してほしい。

許婚に関しては会ったことないしどうでもいいけど。


三歳の私にとってそれは本当に脅威で……当時の私がとった行動はいろいろと黒歴史になったけど気にしない……。

記憶という名の知識を手に入れたところで精神年齢も知能も三歳児。

私の突然の不可思議な言動に組はてんやわんやになった。

お兄様が言うには、「お兄様とひーくんに嫌われちゃう!どうしようっ……」と最終的にお兄様に泣きついたらしい。

そんなこんなでお兄様とおじい様とお母様がつたない私の説明を聞き届け……その対策として"できる女になる„という案を出し、いろいろな習い事をさせてくれた。

と、当時の私は喜んだ。

実際には怖い夢を見たか昼ドラに影響されたと思われ、これを機にと私が嫌がっていたお稽古を強化&追加されたというのが実のところだけど。


まぁ双方の望みは叶ったわけで、私も真面目にお稽古に取り組みスキルアップを重ねていったわけだ。


今の私の周囲の評価(身内の過大な贔屓含む)は、

勉学、作法、武道、容姿、全てにおいてSランクらしい。


評価基準はよくわからない。

それこそ独断と偏見により、というやつだと思う。

組の連中は私にどこまでも甘いのでこの評価の信用はないに等しいと考えてもよさそうだ。



さて、せっせと積み重ねたお稽古とお母様やおじい様の鍛錬でどこまで成長できたかはわからないけれどゲームの開始時期は私と同い年のヒロインが高校に編入してくるところからだ。

この春に中学入学だから準備期限はあと三年。

この三年の間に校内でも地盤を固めヒロイン入学後も生きていける環境づくりを遂行する。

………我ながら可愛げのない目標ではあると思うけど、友人の言う色恋に興味がないのだからしょうがない。


ここで少し説明をいれようか。

中学受験をして入学した『希竜峰学園』は裕福な家の子が集まる中高大一貫校だ。

俗にいうお金持ち校、生徒間の交流はそのまま各家の将来の企業経営に関わる。

人脈を広げるというのがここの生徒ないしは親の受験理由であり入学理由だ。

ここの出身というだけでステータスになるということもある。


うちの組もなかなかに大きな家だから学園内の地位はある程度保障されている。

サロンの使用が許されている限られた家に含まれる程度には、といえば解りやすいのかな?

ここで私は攻略対象全員と顔を合わせることになっている。

件の許婚もここで知り合うらしい。懇談会で親同士が、だけど。


攻略対象たちは皆有力な家の跡取りやらなんやらでこの学園での権力のトップに立つ人達ばかりだ。

総じて容姿と能力に優れているとくれば、学園での人気はアイドルのごとくである。

そんな彼らと深く関われ兄や幼馴染、許婚がいる特別なポジションの女子生徒もまた学園の中では別格の扱いを受けるようになる。


こうして本来なら大きすぎる家の威光を傘に着た愚かな女子生徒が出来上がるわけだ。

言わずもがな私こと水無月桃華のバッドエンドフラグである。

そうならないために、家の名前に劣らない自身の実力というのを今日まで磨いてきたわけだけど。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ