告白を受ける事は、呼吸の仕方を忘れる程の衝撃をもたらすものである。
「ねえ聞いて聞いて!」
「ゲラゲラ笑いながら肩を組んで来ないで下さい」
「いやだって可笑しいんだもの!」
「そうですか? あなたの笑いの沸点は低いですよ」
「お前はいつでもテンション低いよね。……だってさあ、あの子今日、部活してる俺のとこ来て何て言ったと思う?」
「ああ、また言い間違えたんですね。でも義妹はまだ日本に来て日が浅いので、仕方ないですよ」
「『私ヲもてあそぶ、クダサイ!』」
「アウトです」
「そう! そうなんだよ! キラっキラしたビー玉みたいな目で、無邪気にあのセリフ言われるとか、も、本当なんなの!?」
「痛いので叩くの止めてくれませんか」
「で、『も』と『て』は要らないかな~? って言ったらさ、『モテないノ?』って! キョトンとしてひっどいセリフ」
「それで笑い転げるとは自虐的ですね。叩くならクッションにどうぞ」
「おう、ありがと! それと、別にモテたいとは思わないかな。好きな子さえ振り向いてくれたらそれでイイもん」
「『もん』は止めなさい」
「でさ、テイクツーであの子何て言ったと思う?」
「ああ、仕切り直したんですね。正しくはテイクスリーですけど」
「そう、テイクスリーでね、『イタズラしてクダサイ』って……ぶふっ! あの子、俺を、どう、したいの、って……!」
「笑い事か。もっとアウトじゃないですか……息して下さい。笑い過ぎですよ」
「はー、苦しい……相棒は背後でミス連発するし、先輩に追い出されちゃってさ~。俺、相棒があんなにミスすんの初めて見たわ」
「……それで制服の背に靴跡があったんですね。あんなにたくさん」
「蹴るとか酷いよな~。まあ、おかげであの子の望み通り、一緒に遊べたから結果オーライ? でも、今度あの子に正しい日本語ちゃんと教えたげてよ、お義兄ちゃん。俺、そのうち笑い死にそう! 呼吸困難になっちゃうよ~」
「あなたが教えてはいかがですか?」
「ん? 俺で良いの?」
「『すき焼きする、クダサイ』にあなたは的確に応えてたと思いますよ?」
「……え。」
「ちゃんと相互にコミュニケーション取れてるじゃないですか」
「え~? 見てたの~? うわ、恥っず!」
「見られるのが嫌なら、廊下で『I love you』何て言わなければ良いでしょう。あまつさえキスまでして」
「ちょ、一部始終見てる!」
「あなた笑いのツボおかしくありませんか? ……本当に大丈夫ですか? ちゃんと息して下さい」
「ダメ、死ぬ。恥ずか死ぬ」
「『好きだから付き合って下さい』に『愛してる』と応えたんですから、あなたは妹の為にも長生きして下さい」
「ちょ、何で通訳すんの……!」
「言質をとろうかと」
「言質!」
「ハイ、息をする。クッション叩いて笑い転げてないで呼吸をしなさい」
「く、苦し……! も、笑わせないでよ! マジで死ぬ!」