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お城を抜けるとそこは城下町です。あちこちから煙が上がっています。空は雨でも降り出しそうなくらい真っ暗です。
地面は真っ赤です。赤黒い血が一面に広がっています。元々この国に住んでいた人たちも、元々この国に住んでいた人たちをこんな風にした人たちも、もうどこにもいないのです。
壊れて道にまで崩れてしまった建物もたくさんあります。でも大丈夫です。おとうさまからもらった生きるためのすべの出番です。
見上げるほどの大きなガレキもなんのそのです。あっという間に乗り越えます。飛び降りたらどすんと音が鳴りました。
あちらを見てもこちらを見ても、亡くなっている人がいっぱいいます。
ガレキに押しつぶされている人や、炎に巻かれてじゅうじゅういっている人、もう火は消えたのかこんがりしている人。それから一番多いのは切り傷を抱えて倒れている人です。
おとうさまが言っていました。戦争があったそうです。わたしの生まれたこの国は負けてしまったのです。
けれど、敵国の軍隊はおとうさまがなんとかしちゃったのです。どうやったのかは教えてもらえなかったのですが、一人残らず殺してしまったとのことです。
おとうさまいわく、彼らを生かしておいたら不幸になる人がもっと多くなっていたからね。
わたしは生まれたばかりでなにも分からないです。でもおとうさまに教わったことはしっかり覚えているのです。
多くの人を助けるために、少ない人を殺すのは大丈夫です。
数を数え間違えないように気をつけましょう。