読書/トーマス・マン『魔の山』
トーマス・マン『魔の山』読了。第一次大戦前、高原の結核療養所で療養中の従兄を見舞う裕福なエンジニア青年が、医者に持病を指摘されたのを契機にニートライフを満喫。食堂には(ドイツ人席、上級・下級ロシア人席、アメリカ人席、イギリス人席、イタリア人席、スペイン人席当時の国際情勢を象徴する)各国人が集う10ほどのテーブルがあり、青年は年ごとに各テーブルを渡り歩き見識を高める『オデッセイ』要素がある。また物語全体のコンテンツは「時間」であるが、各章エピソードには、BL・不倫・オカルトをテーマとして盛り込んで俗な私を楽しませてくれる。
『魔の山』は、宮崎アニメ『風立ちぬ』の作中で紹介されていたため、原作者ということになっている堀辰雄の全作品と一緒に目を通してみた。するとよくブルーストの『失われたときを求めて』に触発されたという堀辰雄のサナトリュウムもの一連の作品は、宮崎アニメ、堀辰雄ともども、どっぷりと『魔の山』を下敷きにしていることが判った。
かのアニメに好き嫌いが分かれるのは、下敷きとなる小説が、いくらノーベル文学賞受賞作品であるとはいえ、百年前の作品であることから、現代の若い世代、現代女性の感覚とかみ合わない、ジェネレーションギャップが生じたためと考えられる。
ノート20200922(同日ツイート加筆)