読書/泉鏡花『高野聖』
【梗概】
冬、「私」が汽車旅行中、僧呂と相席になり、昔語りを聞く。……夏、僧侶が飛騨山中を行くと、美女と脳障害の青年、老下男が住む一軒家があり、一泊する。夜中、あまたの鳥獣が寝室を取り巻いて鳴くのを聞き、不気味に思えたので経を唱えしのぐ。朝、下山するとき、老下男が美女の正体を語る。原稿用紙100枚相当(短編)。
【登場人物】
〇「私」/進行役の青年。高僧・宗朝から若いころの不思議な体験談を聞く。
〇旅の僧(宗朝)/高僧。
〇富山の薬売り/森の「魔女」に誘惑され馬となり、犠牲者。魔女の老下男によって里で売り飛ばされる。
〇「魔女」/アラサー。村医者の娘だったが、ハイティーンのころ聖女化し、通力で人々の病を癒すようになる。13年前の洪水で、悪魔と契約したのか魔女化。男を誘惑し、不思議な水(薬)で、鳥獣に変える通力を得る。脳に障害がある青年・次郎(出会ったときは少年)を伴侶とする。
〇老下男(親仁)/「魔女」の実家・村医者の使用人。女を「嬢様」と呼ぶ。
【感想】
『夜叉が池』のラスト・洪水では、池のほとりの村を訪ねた視点者・僧侶一人が助かっている。……実はそのとき、たまたま村を離れていたのが、『高野聖』の魔女と下男だろうかと、想像してしまう私。
余談。
昔読んだ陳舜臣の短編集『中国畸人伝』に所収された、南北朝時代の仙人についてのエピソド「葛洪」を思い出す。山中で、認知症の夫と暮らす女仙人と出会い、一夜の契りをして、仙人の通力を得たという話だ。同エピソドが、泉鏡花の『高野聖』を下地にしていることは明白だろう。
蛇足。
wikiでは日本未公開とあるが、私が未成年のころ、1983年制作映画『高野聖』を、昼間の正月向けテレビ放送で、海外向け日活ポルノとは知らずに、視聴した。
ノート20210910




