読書/泉鏡花『天守物語』
姫路城天守閣最上階は天守夫人ら妖精が棲まう異界だ。そこへ鷹匠・図書之助がバカ殿の苛めを受けて迷い込む。バカ殿が狩り場で逃がしてしまった鷹が、怪物ランドたる天守最上部に飛んで行った。鷹匠の貴様の責任だ。腹を切りたくなかったら見てこいと言われたのだ。図書之助はイケメンの若侍、天守夫人は絶世の美女。たちまち二人は恋仲になった。主命を果たした図書之介。最上階にあった兜をそこに行った証しとして、本丸御殿に持ち帰る。すると、バカ殿側は、「秘蔵の兜を盗んできおったな」と、また難癖をつけて、数十名がかりで、図書之助異界まで追い詰める。その際、バカ殿側は最上階に張った結界装置である「獅子頭」の目を傷つけ、妖精たちや、半ば妖精化している図書之介を盲目にしてしまった。追っ手が最上階に迫ってくる。もう駄目だ。あわやというとき、この異界の創造者である「翁神」近江之丞桃六が現れ、通力で、異界ごと恋人たちを転移させてしまった。
近江之丞桃六は還暦くらいにみえる。彫り物師だ。物語の要となるアイテム「結界装置」獅子頭を制作、現在は市井に隠れて楊枝をこしらえ生計を立てているという。作中で「翁神」とは書かれてはいないが、妖精世界の貴婦人である天守夫人との会話から彼女よりも上位に立っている。明らかに、仙境をつくることが可能な神仙・妖精王である。ちょうど、越後のちりめん問屋の隠居を称して全国を漫遊する水戸黄門みたいなものだ。
ラストシーンが唐突なので、一読したときはとまどった。それで、どういうことかwiki検索してみると、古代ギリシャ演劇の影響なのだそうだ。戯曲。
ノート20210921




