読書/泉鏡花『悪獣篇』 ノート20180730
泉鏡花『悪獣篇』1905年
ヒロインの浦子は、三十歳年上の富豪に後家として嫁いだ若い美貌の人だ。嫁ぎ先には継子の賢之助がいて、家庭教師の廉平に師事して高校に合格できた。当主は息子の志望校合格をかなえてくれた廉平への感謝もあり、暇を与えるのと引き換えに退職金をやろうとしたら、別荘近くに地蔵堂を建てて欲しいと願い出た。
その夏、一家は、地蔵堂が建てられた海辺に近い別荘地に行った。継子の賢之助、家庭教師の鳥山廉平、使用人達、そして甥の銑太郎が夫妻に同行した。
継母と義理の息子、そして甥が連れ立って海水浴に行った帰りに、汚い煙草屋の前を通ると、君の悪い老婆がでてきて話をかけてきた。浦子は気味悪がったのだが、銑太郎は気にすることはないと叔母をたしなめる。
夏の終わり、富豪の亭主が不在であった夜、浦子が妖しの術にかけられ、ふらふらとさ迷い、気づけば浜辺の小舟で一夜を過ごしていた。気づいた家人が総出で捜査すると、家庭教師の廉平が浦子を見つけ、事情を聞く。ただ、人に聞かれるとマズイ話なので、小舟で小島に渡った。その際、継子の賢之助と甥の銑太郎によく似た子供達が船頭をする小舟に乗った。
さて、二人が海辺の小屋に入った。
夫人によると、昨晩、別荘で夢うつつでとなり、浜辺の舟に向かうと、そこでバタリと崩れ落ちた。そこで何者かに悪戯されてしまったというのだ。だからもう死にたいと廉平に打ち明けた。入水自殺を望む浦子に、廉平は、とっさに、夢遊病状態になった彼女を襲ったのは自分だ、許して欲しいと嘘をつく。
そこで、妖しい人影。外を見ると建立されたばかりの地蔵堂の前に、木こり風の男がいた。少し離れた海辺には、継子と甥に似た船頭の少年二人が経っている。木こり風の男は、地蔵菩薩を守護する将星で、廉平が地蔵堂を建てさせたことによって現れたのだ。少年二人は将星の眷属だという。
実は、老婆に化けた妖怪が、浦子にとり憑き、入水自殺させようとしていた。将星は石鑿で妖怪を討ち果たし海に沈めた。
浦子と廉平はあまりの不思議さに呆然と渚にたたずむのだった。
明治時代の作品のため、文語調で、すさまじく読みづらく、何度も読んで理解した。ただ句読点や体言止めの感じは、パンパンと歯切れがいいので講談調なのかもしれない。作家中島敦が美文として絶賛するので手にとってみた。短編作品である。
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