読書/海堂尊『螺鈿迷宮』
<あらすじ>
終末期医療を担う医師の一族桜宮家。同じ敷地内にありながら、桜宮病院はK県、碧翠院(寺院)はS県と県境をまたいでいる。桜宮病院での解剖、遺体処理、密室殺人、碧翠院に備え付けた火葬場。二県の異なる行政手続き。これが桜宮一族による殺人トリックを可能にした(1-7章)。
「薔薇の知らせ」において三人娘の名の由来を記す。桜宮巌雄院長は、「桜宮は花盛り、青いすみれに白百合の花」と医師となった三人の娘たちを自慢した。述者・天馬は、6月からボランティアとして天馬が桜宮病院を手伝う。巌雄東城登場(10章)。
小百合の解説(13章)。
厚労省役人・白鳥、勤務医として潜伏し、述者に接近し情報交換を求める(14章)。
姫宮補佐、「おたんこなーす」として潜伏し、述者に解説する(15章)。
白鳥の解説(16章)。
レディ・リリィについて(24章)。
天馬のクライシス(27・28章)。
白鳥と姫宮による桜宮病院経営者一族の犯行について仮説(29章)。
橘茜の過去犯罪・動機、長女の葵の顔にナイフで切りつけ自殺に追い込んだ。桜宮巌雄院長に殺害されることになった(32・33章)。
桜宮病院と火葬場付きの寺院・碧翠院が一体となった「蝸牛」が炎上する(33章)。
トリックの解明(34章)。
全容解明(終章)。態度保留、恋歌。
<構成>
序章・1-34章・終章/全4-389頁
<キーマン・キーパーソン>
天馬大吉……東城大医学生 加賀医師……主戦力の医師 別宮葉子……26歳のジャーナリスト
根岸日菜と南雲杏子……病院スタッフ 桜宮巌雄……桜宮病院の医師で碧翠院住職 桜宮華尾……巌雄夫人・医師 桜宮小百合と桜宮すみれ……双子姉妹で二人とも医師 葵……故人・長女・医師 桜宮家不肖の長男 姫宮看護師(実は厚生労働省の役人で白鳥の部下)
<所見>
幼馴染の女性記者にそそのかされた落ちこぼれ医学生が、寺院と医院を兼ねた施設に潜入し、厚生省から派遣された白鳥とともに実態を調査する。ランポウの『アッシャー家の崩壊』のような妖艶さがあり、海堂作品の中では最も好きな作品だ。
アッシャー家の崩壊を思わせるつくり。――死んだはずの令嬢が生きていた→存在しない筈の遺体が防腐処理されてガラスケースの中に。日本では違法行為。――桜宮家の医師たちによる完全犯罪、「そして誰もいなくなった」ことにするはずだったが、天馬、白鳥・姫宮コンビの活躍で、計画は阻止された。
ノート201900314
角川書店2006




