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もう一度妻をおとすレシピ 第10冊  作者: 奄美剣星(狼皮のスイーツマン)
Ⅳ 読書録
66/100

読書/バルザック『ゴリオ爺さん』


<内容>


下宿に元実業家が入居。以来、貴族に嫁いだ娘二人が無心に訪れる。同居人で妹の愛人の法学生が、なりゆきで友人医学生と、死期迫る老人の世話を焼く。娘二人は、二人のせいで文無しになった父親の臨終・葬儀に来ない。世間の冷たさを知った法学生はエゴに徹して生きようと誓う。


物語は全4章で構成され、このうち第1章は、入居したゴリオ爺さんが何者か、下宿人達があれこれ詮索するあたりがミステリ仕立てである。物語の進行に従って、ゴリオ爺さんは、早くに妻を亡くしたが後妻をもらわず男で一つで娘二人を育ててきたこと、製麺業者としてコツコツと築いてきた財を、溺愛するする娘二人に与えたこと、二人の嫁ぎ先の伯爵と男爵が、下賤な生業だから廃業するように求めてきたので廃業したことを視点者法学生は知る。


法学生は立身出世を夢見ていて、そのために、貴族・上級国民が集う社交界入りを図る。社交界に出入りするには資金がいる。最初、彼は母親や妹たちから無心し、次に懇意となった男爵夫人の愛人となって、無心するようになった。当然のことながら瀕死のゴリオ爺さんの世話を焼いた法学性は、老人から息子のように愛される。エピローグにおいて、法学性が老人を世話をした体験は、人生の中で、価値観を変えさせる大きなステップだった著者によって綴られる。



上級国民を目指し社交界で遊ぶチャラい法学性

    ↓

下宿の同居人・ゴリオ爺さんの世話を焼く

    ↓

子供っぽい甘さを捨て、冷徹に上級国民になるべく新たな一歩を踏み出す



こういう「成長」展開は教養小説形態。また先述したように、ゴリオ爺さんと二人の娘は何者かという点で、第1章はミステリ形態でもある。作品の文体は、頁を文字でぎっしり埋める写実主義。




<主要舞台>


〇仏・パリ、下宿「メゾン・ヴォケー」


<主要登場人物>


〇下宿人・法学生:ウージェーヌ・ド・ラスティニャック。上流階級の顔がきく親戚の紹介で社交界入りし男爵夫人の愛人になる。

〇下宿人・ゴリオ爺さん:伯爵夫人と男爵夫人の父親。製麺業でひと財産築くも溺愛する娘二人に大半を与え零落する。

〇下宿人・脱獄囚ヴォートラン:法学生に世間の闇を教えるメフィスト役。法学生は、ためらいながらも彼の言葉を実行。ゴリオ爺さんの看病中だけ彼の忠告を忘れる。

〇下宿人・医学生:ビアンション。ラスティニャックの下宿人仲間。法学生とともにゴリオ爺さんの世話をする。

〇下宿の女将:ヴォケー夫人。

〇下宿の料理人:シルヴィー。

〇下宿の下男:クリストフ。


〇伯爵夫人:アナスタジー・ド・レストー。下宿来訪者。ゴリオの長女。浮気相手の男に騙され逃げられる。その際、借金をする。夫の伯爵は博打うちで、詐欺的な手口で一攫千金を図るも、慢性的に、家計は火の車だ。子供数人がいる。

〇男爵夫人:デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン。下宿来訪者。ゴリオの次女。夫はドイツの男爵で銀行家。法学生の浮気相手。


ノート20210828

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