読書/ロマン・ロラン『ジャンクリストフ』6・7巻
第6巻は、ジャン視点の第5巻と対をなし、同じ時空を、フランス人姉・弟の視点で綴られることになる。フランスの田舎町の銀行家ジョンナン家没落と、姉の奮闘を描いている。
両親を失ったアントワネットとオリビエ姉弟。姉は、良縁を断り、家庭教師として辛酸を舐め、弟がパリの大学に進学すると力尽きる。死の直前、音楽会で音楽家ジャンを見かける。姉の死後、遺品の詩集にジャンへ宛てた恋文下書きを見つけた弟はジャンに興味をもつ。
第7巻。パリで若い音楽家ジャンと詩人オリビエはついに出会い、意気投合し、アパートを借りて同居する。はじめジャンたちは音楽会をしたが不評。だが音楽家が部屋でピアノ演奏をすることで、近隣住民が慕ってきて、ジャンは彼らのために音楽を奏でるようになる。
ジャンにちょっかいをかけていた、ピアノの元教え子・美少女が、オリビエにちょっかいをだす。美少女は逆ハーレムをつくっており、その筆頭であるちゃらい青年が憤慨。どういうわけだかジャンが、オリビエの代わりに決闘をする羽目になる。拳銃一発撃ちの決闘では双方の弾丸とも命中せず、結局、両者とも事なきをえた。
仕事が順調になってきた。だが二人の祖国、独仏には戦争の影が漂いだす。そんな中、ジャンの母から死期が迫っていることを知らせる手紙がきた。亡命中のジャンは密かに独へ帰国し母の死を看取る。
――第6、第7巻感想――
鼻息粗いジャン、天使のようなアントワネット、控えめな美青年オリビアの関係は、『銀英伝』のラインハルト、アンネローゼ、キルヒアイスの関係にちょっと似ている。あるいは、ほんのちょっとしか時間を共にしていないジャンとアントワネットとの絆は、『ガンダム』におけるアムロとララアのニュータイプな疑似恋愛関係のようでもある。
アントワネット死後、ジャンとオリビアは親友になるわけだが、やたらと、「二人は愛し合っている」という直訳描写が繰り返されるので、この物語って、実はBLものだったのでは? という疑惑が湧いた。するというと当時、古典哲学の素養がある知識人たちが、プラトニック・ラブに憧憬を抱く一方で、キリスト教的道徳心から同性愛が犯罪だったので、ジャンにとってのアントワネットは、カモフラージュなのではなかろうかと思えてしまった。
いや、『ジャン・クリストフ』は偉大なる教養小説だ。私の瞳が曇っているだけに過ぎない。第7巻は、若き天才音楽家と偉大な詩人とが織りなす、バギーものなのだ!
ノート編集20210814-校正20210817




