読書/愁堂れな『小早志少年と売れない名探偵』
父親が日本トップクラスの知能をもつ研究者だった小早志麗人。彼自身もずば抜けた知能をもつ高校生だ。両親と父方祖父を亡くし、元刑事で探偵をやっている母方叔父・武知正哉の事務所に転がり込む。明晰な頭脳をもつがときたま危なっかしい行動をとる甥と、人情家で腕っ節は強いのだが少し不器用な叔父のバディーで、事件を解決していく。ラノベ・サスペンス。
第1話 美少年、売れない探偵の世話になる……005
第2話 売れない探偵に仕事を紹介する……099
第3話 売れない探偵と事件を解決する……169(~245)
1頁37字×16行=592字(※実質400字相当)
第1話は、小早志麗人・武知正哉との再会。甥・叔父の過去ナレーション。叔父が警察を辞める理由となった、大物政治家ドラ息子によるOLひき逃げ事件の解決。美麗な甥は女装して、好色な犯人を罠にかける。
第2話は、甥の同級生がストークされているので、甥を介して叔父に護衛を依頼。だが謎のストーカーの正体は依頼者の身内に雇われた刺客だったというもの。
第3話は、会社重役に美人秘書がストークしていると、重役の妻から依頼がある。叔父が美人秘書に接触してみると、二人は交際していて、重役は妻と判れたがっていると証言した。操作の最中、重役が妻に毒入りワインを飲ませて殺害を図るが、妻がグラスを取り替えたことで重役が毒死する事件が発生。仮説は二転三転し、家庭内でDVに悩んでいた妻と、セクハラで悩んでいた美人が結託して、重役に保険をかけて、山分けしようとしたというものだった。
松岡圭祐先生『小説家になって憶を稼ごう』によると、昨今の小説は「設定」「対立」「解決」の三部で構成されるとある。言い換えてみると、鈴木輝一郎先生が記すところの小説入門では、「ハードルの設定」「ハードルに挑む」「ハードルを飛び越える」となり、ミステリなら、事件の「発生」「捜査」「解決」となる。……本作は、短編事件簿形式なので、第1話では第1の事件を捜査しつつ作品の主だった設定を著し、第2話以降は、各事件に重点をシフトしている。視点者は小早志麗人と武知正哉の2人で、それぞれ第一人称を用いている。
ノート20210414




