画集/「チャイナドレス」「ゆあみ」「えくぼ」 「草原の乙女」 「むかしのお友達」「小悪魔」「ソフィア」
チャイナドレス(掌編小説)
むかし恋をしてはふられてばかりいる若者がおり、人は若者を指差して恋太郎とよんだ。花や紅葉が、はらはら、と宙に漂うかのような若者だった。
「武則天はもともと唐王朝の後宮にあまたいた愛妾の一人でしかありませんでしたけれど、美貌と才覚を武器に、皇后に上り詰め、皇帝が亡くなると、唐王朝を乗っ取って皇帝に即位、国号を周に改めます。政治は悪くはありませんでしたけれど、強引な改革を断行したことと、封建制の時代、女性だということで反感をかいました。この墓は、武即天の皇女のものです」
上海から列車に乗り、終点の西安で降りたとき、出迎えに来てくれたのは地元博物館学芸員の若い女性だった。恋太郎は仕事関係の研究雑誌に論文を載せるため取材に訪れたのだ。西安は歴代王朝が首都に定めた古都だ。早速、彼女の案内で、最近発見された唐王朝皇族墓を見学する。
玄室は地下をくりぬいて四角いホールをつくっており、そこに至るゆるいスロープの壁面には、精緻な人物画が描かれていた。文官、武官、それに女官たち。そのなかに、ひときわ目を引く麗人がおり、その前に立った。絵は女性学芸員に酷似している。
(なんて綺麗な人なんだ)
恋太郎は不思議そうに絵をみていると、後から彼女に、ふっ、と抱かれて驚く。
「きてくれてありがとう」
(夢か)
気がつくと恋太郎は車窓にもたれたまま、うたたねしていた。汽車が西安駅に着いたとき、定年も間近な老学芸員が出迎えにきて、夢と同じく、例の墓に行った。
「列車の中で、ここにくる夢をみたのです。若い女性学芸員が迎えにくる夢です。墓に下りると皇女の壁画がありました」
「すごい、正夢ですね、まさしく皇女の壁画。皇女には、臣下筋に婚約者がおりましたが、彼は母武則天に疎まれ殺されかけます。このとき皇女がかばったので代わりに殺されました」
「婚約者は?」
「西域に亡命。武即天が晩年に失脚すると帰国して大臣に抜擢されます。生涯独身だったのだとか」
恋太郎は壁画に合掌すると、何度も振り返りながら、皇女の墓を後にした。
「チャイナドレス」 1992年 (水彩)
洗い髪
いまみると稚拙と思いながら、いまかけない色とかがあったりします。 目のあたりとかしっかりかけよ。と過去の私に指導してどうする。 ヌードを描く機会のきわめて少なかった私。よし、気合い入れてかくぞお!(こてっ)
「洗い髪」1991年(水彩)
えくぼ
一連の女性の絵ということで、わが青春時代は……「ぎんぎらぎんにさりげなく」(歌手:近藤真彦♫)
「えくぼ」1991年(水彩)
草原の乙女
猛暑続く中、燕が旅立ってゆきます。私が携わっている関東のとある遺跡に、アフガニスタンから二人の若い考古学者が研修のため訪れてきました。近く鉱山開発に伴う仏教寺院の緊急発掘調査を行うとのこと。アフガニスタンといえばルビーくらいしか思い浮かばず、「どのような鉱山か」うかがったところ、通訳の日本人博士が、「アフガニスタンでは外貨獲得のため、鉱山の探査に躍起になっており、外国技術者を招聘して、どうにか、発見したのが銅鉱山。開発にあたって各国に打診したところ、手を挙げたのは中国一国のみだった」のだとか。精悍な顔をした二人の考古学者。紀元前四世紀の遺跡を掘る前に、立ち寄って、また帰る。
内戦多く、地元の考古学者も戦士の顔。しかしって中国。すげえ~ですう~。
「草原の乙女」1991年(水彩)
湖畔
よいこのみんなは、作者とモデルの関係をあーだこーだ訊かないよね。いいこだなあ。よしよし。なんてフィクションだよ、フィクション(ぷるぷる、ふぃっくしょん…(-_-;) 彼女、素敵なお母さんになっているのだろうなあ) 「星よりひそかに 雨よりやさしく~♪」(作詞佐伯孝夫 作曲吉田正『いつでも夢を』より)
「湖畔」 1991年(水彩色鉛筆)
小悪魔
季節みだれて あつさながびくように 想いというのも 残るものらしい
いろいろあっても、誰一人憎むことができなかった。繰り返えすうちに「男の子」は、「男」になるのでしょうね(自爆どっか~ん)
……意味不明なポエムのあとに一言。良い子のみんなわかってるね? 著者とモデルとの関係を追求しちゃ駄目だぞ。だ~っ!(←猪木かよ)
「小悪魔」1991年(水彩色鉛筆)
うつ伏せ
人生いろいろですよ(冷笑)。島倉千代子の「人生いろいろ」はしぶすぎるので、代わりにこの詞など。あ、もっと渋かった。「……シングルベッドで夢とお前抱いてた頃 くだらない事だって 二人で笑えたね ……今夜の風の香りは あの頃と同じで 次の恋でもしてりゃ ああ 辛くないのに♪」(シャ乱Q 「シングルベッド」より)
「うつ伏せ」1990年(水彩色鉛筆)
ソファア
学生時代の同期の夫人がモデル。写真よりおこして、同期のご亭主プレゼント。その、予備の絵。いいね、美人の奥方で。モテない私は、『勝手にシンドバッド』を聴いていたのでありました。「……ら~ら~ら~らら~ ……ふきが崎 人も波も消えて ……主では ちょいと瞳の啼きに消えたほどに…♬」(サザンオールスターズ『勝手にシンドバット』)
「ソファア」1991年 (水彩色鉛筆)