秘密の告白
☆
朝が、来る。
景子は、自分が寝ていた事実に驚いて飛び起きた。
あんなことがあったのだから、絶対に眠ることなんか出来ない──そう思っていたはずなのに。
落ち着かないままキョロキョロすると、隣のベッドで菊がぐっすりと眠っている。
ああ、そっか。
昨日、菊にベッドの中に押し込まれたのだ。
そして。
ただ、呼吸をさせられた。
ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて。
そんな単調な繰り返しをさせられている内に、ぐっすり朝まで眠ってしまったのだ。
何という、単純な身体なのか。
そして、目覚めたら思い出さないことなど不可能で。
昨夜、アディマに言われた言葉を追い払うように、景子は掛布を握りしめたままジタバタと暴れた。
ど、どうやって顔を合わせればいいの!?
彼女の人生の中で、プロポーズされた経験などない。
しかも、相手は日本人ではないし、同じ世界の人でもないし、一般人でもないし。
とにかく、何もかもが景子と違う人なのだ。
そして。
年の差。
もし、アディマに年齢を聞かれたら、景子はどう答えるというのか。
嘘をつくのか。
だ、ダメだ。
ズーンズーンと一気に2段階、彼女の足もとが崩落した。
自分の目の秘密は、勇気を持って話せたというのに、年齢のことが今となってはもっと大事に感じる。
「おはよう……」
声をかけられてびくっとすると、菊がまだ横になったままこっちを見ていた。
一人でじたばたしていたせいで、起こしてしまったのだろうか。
はっ、と。
彼女は、菊を見つめ直した。
同じ日本人で、同じ性別で、少なくとも景子に近い菊ならば、この葛藤を分かってくれるのではないかと思ったのだ。
同じ性別なら、何故か恥ずかしさも多少さっぴかれるという不思議な現象もある。
「き、菊さん! わ、私……実は……さ、31歳なんだけど!」
ひっくり返る声をそのままに、景子は唐突に自分の秘密を告白した。
「あっはっはっは!」
爆笑された。




