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秘密の告白

 朝が、来る。


 景子は、自分が寝ていた事実に驚いて飛び起きた。


 あんなことがあったのだから、絶対に眠ることなんか出来ない──そう思っていたはずなのに。


 落ち着かないままキョロキョロすると、隣のベッドで菊がぐっすりと眠っている。


 ああ、そっか。


 昨日、菊にベッドの中に押し込まれたのだ。


 そして。


 ただ、呼吸をさせられた。


 ゆっくり吸って、ゆっくり吐いて。


 そんな単調な繰り返しをさせられている内に、ぐっすり朝まで眠ってしまったのだ。


 何という、単純な身体なのか。


 そして、目覚めたら思い出さないことなど不可能で。


 昨夜、アディマに言われた言葉を追い払うように、景子は掛布を握りしめたままジタバタと暴れた。


 ど、どうやって顔を合わせればいいの!?


 彼女の人生の中で、プロポーズされた経験などない。


 しかも、相手は日本人ではないし、同じ世界の人でもないし、一般人でもないし。


 とにかく、何もかもが景子と違う人なのだ。


 そして。


 年の差。


 もし、アディマに年齢を聞かれたら、景子はどう答えるというのか。


 嘘をつくのか。


 だ、ダメだ。


 ズーンズーンと一気に2段階、彼女の足もとが崩落した。


 自分の目の秘密は、勇気を持って話せたというのに、年齢のことが今となってはもっと大事に感じる。


「おはよう……」


 声をかけられてびくっとすると、菊がまだ横になったままこっちを見ていた。


 一人でじたばたしていたせいで、起こしてしまったのだろうか。


 はっ、と。


 彼女は、菊を見つめ直した。


 同じ日本人で、同じ性別で、少なくとも景子に近い菊ならば、この葛藤を分かってくれるのではないかと思ったのだ。


 同じ性別なら、何故か恥ずかしさも多少さっぴかれるという不思議な現象もある。


「き、菊さん! わ、私……実は……さ、31歳なんだけど!」


 ひっくり返る声をそのままに、景子は唐突に自分の秘密を告白した。


「あっはっはっは!」


 爆笑された。



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