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キィクゥ

 20日。


 無事、不吉と言われる19日を越え、アディマ一行はセルディオウルブ卿の屋敷を後にすることになった。


 昨日の夜あたりから、孫娘は床に伏せっているという。


 心配しかけた景子に、卿はいたずらっぽく、こう耳打ちしたのだ。


「そっちの若者が、女だと教えたら……ショックで寝込んでしもうたんじゃ」


 翁は軽やかに笑うが、彼女はそれに笑っていいのか、困っていいのか分からなかった。


 ああ、そういうことだったんだ。


 再び、旅の衣装に戻った菊を見ながら、景子は複雑な気分だった。


 罪な女性だ。


「行こうか、ケーコさん」


 列の一番最後。


 そこが、二人のポジション。


 アディマたちが歩き出したのを見て、二人はそれについてゆく。


 老領主に、もう一度深いお辞儀をして。


 すぐに、町に入ったが、何だかちょっと雰囲気が変わった気がした。


 まだ早朝だが、仕入帰りや開店の準備で、たくさんの人々が入り乱れている。


 その中のご婦人がたの。


 髪型に。


 見覚えがあった。


 いま、景子がしている編み込みと、まったく同じ髪型だらけだったのだ。


 若奥様も年配のご婦人も、駆け抜ける少女も。


 あらら。


 隣の菊を見ると、彼女は苦笑して見せた。


 町で髪結いを伝授してきたとは聞いていたが、たった二晩で町中大ブレイクだ。


 なまじ、昨日が19日で店が休みだっただけに、編み方を広める時間が無駄にあったのかもしれない。


 本当に罪な女性だと、景子が菊を見て笑おうとした時。


「キィクゥーーー!」


 すっごい甲高い声が、すっ飛んできた。


 この世界で、菊の名を呼ぶものは少ない。


 驚いた景子が、振り返ったら。


 油売りの少女が、大きく手を振っていた。


「また来てね! また来てねー!」


 ぶんぶんと手を振る少女に、菊は笑いながら片手を上げて答えたのだった。



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