子供ならざる者
☆
ぐったりした梅を抱えたまま、景子はただひたすらに光の動きを追っていた。
菊の光が、最初の集団と接触した時は、自分の心臓が口から飛び出すんじゃないかと思ったほどだ。
梅の声は届いただろうが、向こうが菊に危害を加えないなんて保証は、どこにもないのである。
それに、後方の怖い集団も、どんどん近づいてきていた。
「あ……」
光が、分かれた。
二つの光点を残して、他の三つが離れたのだ。
菊は、残った方だった。
離れた光は、こちらに向かってくる。
まばゆいほど美しい光が、景子たちの方へと近づく。
「──!」
女性の、掠れた悲鳴のような声が聞こえる。
息も絶え絶えで、うまく悲鳴にもできずにいるのだ。
それと、男の気遣うような声。
まばゆい光は、その二人ではなかった。
光が近付けば近付くほど、その大元は大きくなかったということが分かる。
それは、小さな子供の姿をしていたのだ。
その目が。
景子を。
見た。
闇夜。
他の人には、まぎれもない闇夜の中、彼女は光に見詰められたのだ。
子供の姿をしていながら、それが子供ではないことを景子は気づいた。
子供特有の光ではなく、それはもっと深く艶やかだったのだ。
「───」
その子供ならざる者が、何かを語りかけてくる。
「あ、あの……言葉……分からないの」
梅は気を失っているため、答えられるのは自分だけ。
ただ。
どきどきした。
怖い、という意味ではない。
その瞳と光に、魂を持っていかれそうでどきどきしたのだ。
「───」
子供ならざる者が、静かに言葉を紡ぐと。
一緒にいた女は、ほっとしたようにその場にへたり込んだのだった。




