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笑い話

 いい気分で、菊は部屋へと戻った。


 ほんの少しの酒で、微かにふわついていたのだ。


 酒は、たしなまないほうがいいな、と思いながら。


 杯に残った酒は、結局ダイが全部片付けたが。


 一瓶開けてもなお、彼はけろっとしている。


 相当のうわばみのようだ。


 部屋に戻ると、景子がソファに座ったまま、奇妙な顔をしていた。


「景子さん?」


 声をかけると、はっと顔を上げる。


「何かあったの?」


 向かいのソファに腰掛けながら、菊は聞いてみた。


「あーうん……さっきまで、アディマが来てたんだけど……」


 御曹司が、ケーコをお気に入りにしているのは、ちっこい頃から分かっていた。


「ダイさんの話を、いろいろしてくれたんで……聞いてたら……」


 そこから先の話は──笑い話だった。


 酔いの影響もあるのだろうが、菊は自分でもおかしいと思うほど笑ってしまったのだ。


「え? え?」


 分かっていない景子を見ると、なおさらおかしさが増す。


 景子が、余りにダイのことを聞くので、彼女がダイを好きなのかと思ったに違いない。

 

 御曹司は、いっちょまえにダイにやきもちを焼いたのだ。


 そうじゃないと分かった途端、ほっとして笑い出した、というところだろう。


 御曹司はまもなく19歳になると、前に景子に聞いていた。


 前に小さかったのが、普通じゃなかったのだと。


 元から子供らしくなかったが、ついに中身と身体が一致したのである。


 色恋のひとつやふたつ、芽生えてもおかしくなかった。


 いや。


 大きくなる前から、それは芽生えていたようにさえ思えたのだ。


 さてもさても。


 どうなることやら。


 菊は、目を細めた。


「何がおかしいのー?」


 メガネの目を、ぐるんぐるんと動かす景子を前にしながらも、菊は自分の推測を口にすることはなかった。


 人の恋路に口出しするのは、野暮天のすること、ってね。



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