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もう一目

 ブロズロッズは、どうやら有名な土地のようだ。


 町の人々に聞けば、すぐに方向を教えてもらえるほど。


 菊の言葉は、余り進歩がなかったが、景子は日々向上していった。


 前よりも、もっと懸命に覚えようとしているのだ。


 そして、農村などに寄る度に、作物の様子を見て土を見て、村人と大地の話をするのである。


 彼女の知識がとても役に立ったのか、家に泊めてくれたり、旅の食料を分けてもらえたりと良いことずくめだった。


 とある村など、しばらく滞在してくれとまで言われたほどで。


 迷いながらも、景子は断っているようだったが。


 その間、盗賊に3回ほど出くわした。


 いずれも少人数だったので、菊が丁重に追い払ったが、やはり女の二人旅は物騒ということが分かった。


 前は、ダイという大きな番犬がいたために、少人数の盗賊などは手出ししてこなかったようだ。


 菊の役に立つところなど、結局はそういう荒っぽいことだけ。


 ある意味、景子に食わせてもらっている状態なのだ。


 結局。


 ブロズロッズという町が、次の町であることを知ったのは、彼らと別れて更に1ヶ月近くたった頃のことだった。


 その頃には。


 景子は、ほぼ日常会話には困らないほどになり、農作物の専門的な話でさえ、大体身に着けたようだ。


「いよいよ……次の町なんだ……」


 不安そうに菊を見る、メガネの向こうの瞳。


 まだ。


 まだ、景子は御曹司に会いたがっている。


 それは、菊にもよく分かった。


 この国に根付いて生きてゆく術も、彼女は身につけつつあるというのに、それでもブロズロッズに向かわずにはいられないのだ。


 あんな別れを、したからだろうか。


 人づてにしか、伝えられなかった『さようなら』が、尾を引いているのか。


 再会出来たところで、あのリサーが再び快く彼女らを受け入れるとは思えないのに。


 それでもきっと。


 もう一目。


 もう一目だけでも、あの御曹司に会いたいのだろう。


 菊も、ダイになら会ってもいい。


 大きい図体の割りに、彼は気持ちのいい男だったから。


 そんな菊の感情を、きっと猛烈に強くしたら──いまの景子になるのだろう。



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