表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
268/279

憤死寸前

×

「ダイエルファン……やっぱり、お前もか」


 恨みがましい言葉を、リサーが投げつけてくれた。


 やっぱりという言葉が出るということは、彼は分かっていてダイに釘を刺していたのだ。


 誰に言うこともなかった、自分でもうまく扱えなかった思いだというのに、分かる人間には分かるのだな、と素直に感心する。


「賢者の妻が異国人など……前代未聞だ!」


 リサーの語気が、強くなる。


 もっと前代未聞の、この国の御世継ぎがいるのだが、それは彼の中では特別枠なのだろう。


「大体、あの者はこの国の戸籍は持つまい。正式な婚姻など、出来るはずがない」


 ああ。


 何だと、ダイは思った。


 戸籍がないから、正式に結婚は出来ない。


 だから、妻にはならないのだと、そう彼は言っているのだ。


 相変わらず、手続きや肩書の好きな男だ。


「構いませんし、困りません」


 ダイは、妻にしたいと申し出、彼女はそれを受けた。


 それ以上の約束など、ないのだ。


 キクが受けたということは、彼女自身がダイを夫として決めたということ。


 何ひとつ、困りはしない。


「お前は賢者になるんだぞ!」


 余りに必死な表情で詰め寄られ、ダイは苦笑してしまった。


 リサーの思考の中で、美しく飾られた賢者の椅子。


 一代限りではあるが、約束された栄華。


 その椅子に座るのに、相応しいものになれと、彼は突きつけるのだ。


「そのことですが……」


 ダイは、いつもここで困っていた。


 イデアメリトスの御方の期待に応えるため、相応しくならなければならないのだろうと、そう考えていたのだ。


「賢者に相応しくなければ、外して下さい」


 言葉を理解しただろう直後。


 リサードリエックは、憤死しかけた。


 彼に、胸ぐらを掴まれたのは──これが初めてだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ