表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/279

暗い箱

 ウメが、さらわれたという。


 アディマの耳に、ケイコを通じてそれは伝えられた。


 魔法でも使ったかのように、いなくなったと。


 ケイコは、すっかり動転していて、何とかかいつまんで彼はそれらを理解したのだ。


 またも、イデアメリトスが噛んでいるのか。


 そう思いかけはしたが。


 いま、この宮殿にいるイデアメリトスは、二人だけなのだ。


 父と自分。


 叔母は、近々婚姻の儀のためにやってくるが、まだ来てはいない。


 アディマに、心当たりがあろうはずもなく、父がわざわざウメを誘拐する理由もなかった。


 貴族たちの、利害ひしめく暗い箱。


 いまの宮殿の裏側が、それだと証明するような事件だ。


 ダイから、最近ウメやキクの身辺が穏やかではないという話は聞いていた。


 アディマに出来るのは、宮殿にいる間、ウメの護衛を許可する程度。


 それでもなお、彼女を邪魔だと思う者は、行動するのだ。


「わ、私も探しに行っていい?」


 慌てながらも、ケイコはそれを訴える。


 黙って座っていられないのは、見ていても良く分かる。


 彼女の、数少ない同胞の身が、危険なのだ。


 こんな時でも、ケイコはアディマに『魔法で探して欲しい』ということは言わない。


 言われたとしても、失せ人を見つけられるような、都合のいい魔法はないのだが。


「分かった……護衛を連れてゆくんだよ」


 だから、アディマは許可を出すしかなかった。


 イデアメリトスの世継ぎとしては、あまりおおっぴらには動けないのだ。


 彼が動けば動くほど、貴族たちの嫉妬が大きくなる。


 何の爵位も持たぬ娘に、と。


「ありがとう!」


 一度、アディマの首に抱きつくと──妻になる者は、飛び出して行ってしまった。


 既に、時間は夜。


 弱い身体のウメには。


 それは、とても危険な時間に思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ