表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/279

泥まみれの花嫁

 景子は、困っていた。


 アディマと結婚をするという事実の重さは、日に日に大きく、しかも重圧を伴っていたのだ。


 次期、イデアメリトスの太陽と呼ばれる世継ぎの結婚式なのだから、豪華絢爛であってもなんらおかしくはない。


 またしても1週間ほど、都は祭りと化すらしい。


 国を挙げての、結婚式なのだ。


 準備の時間も、たっぷりかかる。


 婚姻の承認に、四神殿の神官を招くため、軽く半年先になってしまう。


 そのおかげで半年間、景子は宮殿に缶詰になる──ところだった。


 とんでもない、と。


 即座にアディマに直談判に行き、農林府の仕事が出来るように懇願したのだ。


 既に、結婚のお触れは出されている。


 しかし、幸いなことに世継ぎの結婚としか書かれておらず、景子の名前は出されていないのだ。


 世間一般には、顔も名前も知られていないいまなら、まだ動きやすいように思えた。


「妃になるものが働き者だと……僕は更に働き者でなければならないな」


 アディマには、そう苦笑されてしまう羽目になる。


 外に出る許可が出るまで、少しかかった。


 ただし、一人で、ではない。


 ダイお墨付きの、品行方正な近衛兵が常時つけられることになったのだ。


 後で、リサーに思い切り睨まれたことを考えると、彼も不承不承納得させられたのだろう。


 子供たちは、というと。


 一人につき一人ずつ、気品ある乳母がつけられた。


 まあ、お坊ちゃんたち、よい身分だこと──そう景子が笑うほどの好待遇である。


 ただ、朝一番だけは、景子が二人の部屋を巡って授乳させていた。


 そうしたかったのだ。


 でなければ、子供たちに自分のことを忘れ去られてしまいそうで。


 結婚式の準備が着々と進んでいく中、妃予定の景子は、畑で泥にまみれていることとなったのである。


 唯一、ついていたことは。


 日焼けした肌になったとしても、お国柄上、まったく問題がなかった、ということだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ