表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/279

血の流れ

 梅の旅路は、アルテンの提案で、普通の人が歩いて向かう程度の速度で安定した。


 本来、荷馬車の旅は、御者が交代で一日のほとんどを移動し続けるものだ。


 馬と呼んでいる犬のような生き物は、とにかくタフで、1日数時間の眠りで進み続けられる。


 その移動を、梅が眠っている間だけにしたのだ。


「昼間は出来るだけ動いた方がいい……身体に障らない程度には」


 アルテンに言われ、梅は苦笑した。


 動いて、疲れて、ぐっすり眠れと言っているのだ。


 ぐっすり眠れば眠るほど、その分旅路は進むのである。


 長く眠ることが、自分のため、人のためとなるのならば。


 梅は、気分のいい時は、徒歩で少しずつ進むことにしたのだ。


 とはいうものの、彼女の歩ける距離など、たかが知れている。


 荷馬車はすぐに、進んだ距離を追いつける。


 兵士は、一人になったまま。


 その代わり、アルテンが入ってくれたのだ。


 兵にも、派閥や縄張りがあり、ほいほいと他の地域の兵士を駆り出すことは難しいようだった。


 その辺りの、融通の利かなさは気になるところだ。


 国が巨大で、役人の動きが重い。


 そんな、この国の体制に関することを考えながら、梅は歩き、荷馬車に揺られて眠った。


 ゆっくりと、だが、確実に都に近づく彼女は、途中でリクと再会する幸運に恵まれた。


「テイタッドレック卿の御子息が、御者台に乗ってらっしゃったので……」


 都からの帰り道という彼は、たくさんの嬉しいことを梅に伝えてくれた。


 景子が妊娠していること。


 菊が、都にイデアメリトスのお墨付きで道場を建て始めたこと。


 そして、景子が農林府でやろうとしていること。


 報告の後、ふとリクは考え込む仕草を見せた。


 視線を、彼女に向ける。


「他の町との間で、情報を血液のように流す……意味は、分かりますか?」


 言葉には、微かな怪訝があった。


 彼自身、そのビジョンははっきり見えていないようだ。


 この言葉を、菊が言ったとは思えない。


 言うとするならば、景子だろうか。


 梅は、にこりと笑った。


「ええ……とてもよく分かるわ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ