ガールズトーク?
☆
トーが、イデアメリトスのお墨付きで、国中を歌って回れるようになったと聞いて、景子はほっとした。
菊が、彼女の居候している部屋を訪ねて来て、教えてくれたのだ。
素直に喜ぶ景子に、彼女は少し複雑そうな笑みを浮かべる。
「ところで、この暑苦しい国でフードをかぶるような輩を知らないかい?」
その笑みの説明をせずに、菊は話の道を曲がる。
フード……。
心当たりは、ひとつしかない。
「ええと……アディマの叔母様のところに、一人いる、けど」
スレイだ。
何故、菊の意識に引っ掛かっているか分からないが。
「ああ、なるほど。合点がいった」
話の雰囲気から、直接ぶつかり合ったわけではないようだ。
その点では、ほっとした。
「やる気のない態度で、私を見張っていたからね。腕は立つだろうに、ムラがあるな」
あー。
菊の言葉に、苦笑を浮かべずにはいられない。
ロジューに言われて、トーを見に都にやられたのだろうか。
それは、やる気も出ないだろう。
景子を送ってきた時も、そんな風だった。
きっと彼は、ロジューの側にいて、ただ彼女を守りたいのだから。
「強い男が集まっているな、都は。お手合せ願いたいが、試合という形で戦ってくれる人間はいなさそうだ」
願ったりな環境なんだがな。
菊の困った笑いを見ながら、ふと景子は思った。
「ダイさんは?」
それは、素朴な疑問だった。
彼は、軍の人だ。
訓練や稽古で、戦うのは日常茶飯事ではないのか、と。
「え? ダイ?」
菊は、意外そうだった。
その意外の瞳が、途中で細く変わってゆく。
「ああ、そうか……ダイとはそういう戦いも出来るかもだな」
少し。
嬉しそうだった。




