表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/279

気合

「まったく……甘やかしすぎだ」


 景子を自分のベッドにぽいと投げ捨てながら、ロジューはその縁にどすんと腰かけた。


「すみません……」


 自分が怒られている気がして、彼女は小さくなる。


 そんな彼女を、文字通り上から見下ろす。


 じろじろと不躾なほど。


「まあ……いい。毒が抜けたばかりで、湯浴みまでしたんだ。その上、愚甥にこんな時間まで好き放題されたなら、歩けなくなっても当然だな」


 ふぅ。


 顰めっツラのまま、彼女は天を仰いだ。


 あうう。


 ロジューの表現に、不適切なものが混じったことに気づき、景子はもっともっと小さくなった。


 何が起きたのか、知っている人間がいるということに、どうしても慣れない。


 イデアメリトスの世継ぎであるアディマには、プライバシーはとても少ないのだ。


「もう、今日はここでいいから寝ろ。あと1日しかないんだ……明日に備えて休め」


 掛布を放り投げながら、ロジューは景子に言いたい放題だった。


 っていうか。


「あと1日……?」


 ひっかかった言葉を、景子はつい唇に乗せていた。


「明後日、帰ると言っただろう? お前が愚甥と子を成せる機会は、とりあえず明日までだ」


 うわあ。


 風情もへったくれもなく、ロジューに語られて、景子は微妙な顔になってしまった。


「気合で懐妊しろよ……でないと、また都へ行く手間がかかるからな」


 こづかれて、睨み下ろされる目に耐えかねて、彼女はあらぬ方へと目をそらす。


 そっか。


 明日でダメだったら……またアディマに会えるのかぁ。


 ふと、そんな不謹慎なことを考えてしまった。


 胸のあたりで、ほわほわするその感覚を、景子が抱きかかえていると。


「くだらないことを、考えている顔だな」


 ロジューは──見逃してはくれなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ