女風呂
☆
吉井景子、32歳。
多分、好きな男の子を産める機会は、もうそう多くは残されていない。
それならば、と。
彼女は、アディマの子を産みたいと思った。
心も思ったし──子宮もそう思ったのだ。
イデアメリトスの子を産む、という覚悟はない。
ただ、アディマの子を産みたい。
その気持ちに、景子は逆らえなかった。
逆らえば、二度とその機会は彼女の前には訪れないだろう。
だから、目の前のロープに手をかけたのだ。
「貧相な身体だな……」
景子にお湯をぶっかけながら、ロジューはひどいことを言った。
あう。
もうもうと湯気のたちこめる浴場にいるのは、たったの二人。
立場上、景子はロジューの側仕え、という扱いだ。
なので、周囲にはロジューの湯浴みのの手伝いに、景子が入っている──そう思われていた。
だが正確には、宮殿の勝手の分からない彼女を、イデアメリトス自らが湯船に放り込みにきたのである。
そんなロジューは、筋肉を伴った美しい身体を持っていた。
彼女から見れば、大半の女性の身体など、貧相なものだ。
景子だって、日本ではカロリーオーバーを恐れる程度の身体はしていたのだ。
しかし、この国に来て1年以上。
粗食での生活が当たり前となっていたため、二回りは自分が小さくなった気がした。
「まあいい……これから、いくらでも太らせてやる」
まるで、家畜の鳥を前にしての発言だった。
ひぃ。
光るロジューの目に、景子は腰が引ける。
「まあ……身体は貧相だが」
そんな景子を磨き上げ、大きな浴槽に沈めながら、ロジューはため息をついた。
「妙に度胸だけはあるな」
イデアメリトスの子を、産んでみようなんて。
変な角度から、感心される。
誰が、最初に焚きつけたんですか!
そう突っ込みたい心を、景子はぐっと我慢しなければならなかった。




