表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/279

真相

「カナルディシーデンファラム……」


 アディマは、肩を落とした。


 目の前には、父と叔母。


 そして──戒められた妹。


 まだ小さい身体だが、彼女には長い髪がある。


 小さくとも、イデアメリトスの子は魔法は使えるのだ。


 しくしくと泣き続ける妹に、アディマはどんな問いかけも出来ずにいた。


「馬鹿娘が……」


 ふぅと、イデアメリトスの長が苦悶の息を漏らす。


 彼にとっても、この事件の真相は胸を痛めるものだろう。


「お兄様がいけないのよ! お兄様が、叔母上様を第一候補なんかにするから!」


 泣き崩れながら、ヒステリックに妹は叫んだ。


 とても、姿と見合う叫びではない。


 カナルディは、十六歳。


 十六歳の叫びにしても、それはヒステリック過ぎた。


「他の、髪を伸ばせないイデアメリトスにすればよかったのに! そうしたら、簡単に殺せたのに!」


 だが。


 十六歳の娘とは思えない、恐ろしい言葉を吐き出すのだ。


「何故に……カナルディシーデンファラムよ。兄の妃候補を、殺そうなどと思うのだ」


 苦悶の瞳を閉じながら、イデアメリトスの長は問う。


 妹の瞳が。


 涙に濡れたカナルディの瞳が、強い金の光を放って父親を見上げる。


「だって……」


 その唇の端が、釣り上がるように笑う。


「だって……お兄様の結婚相手が全部いなくなったら……私に順番が回ってくるでしょう? 親が半分違って、結婚したことがあるじゃない!」


 その場の三人全てが、言葉を失った。


 確かに、カナルディの母親とアディマの母親とは違う。


 三人の子を産んだ母は、太陽に召されたのだ。


 次の父の妻は、カナルディを産んで──そして太陽に召された。


 近親婚のせいで、身体が弱い者が多いせいだろう。


 その弱りかけた血を。


 更に濃くしようと思っていた娘が、ここにいたのだ。


 カナルディは、彼をただ兄として、慕っていたわけではなかったのである。


「しかるべき処分を……」


 それを、父に向かって口にすることしか──アディマにはできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ