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おはよう

 梅が目を覚ますと──そこは、寝台の上だった。


 あら?


 まばたきをして、彼女は天井を見上げる。


 頭がぼーっとするのは、熱が出たせいか。


 今日は一日、ここから起き上がることはできないだろうと、梅は自己診断をした。


 それから、首だけを軽く横に動かす。


 隣にも寝台があった。


 菊が、毛布に丸まって眠っているのが見える。


 ほっと。


 安堵のため息をついた。


 安堵したおかげで、ゆっくりと周囲を見ることが出来た。


 深い褐色で統一された木材でつくられた家具、寝台。


 広く敷き詰められた絨毯は、とても趣味のよいものだ。


 毛布をずらして自分の姿を見ると、単衣姿で。


 帯のままでは、まともに横になれるはずがなく、脱がされたようである。


 肘で少しだけ身体を起こすと、着物はたたんでテーブルの上に置いてあるのが見えた。


 畳み方は、多少変だったが、それでも着物のことをまったく知らない人間がやったのではないということは分かる。


 ああ。


 ある人の顔が、頭をよぎろうとした時。


「あ、梅さん、おはよう」


 ドアを開けて、日本語が飛び込んでくる。


 そうそう。


 梅は、目を細めた。


 昨日出会ったばかりの、不思議なお姉さんだ。


「具合はどう? 熱があるみたいだけど」


 ころころと表情の変わる、メガネの中の瞳。


 こんなとんでもない環境の中で、菊や梅の面倒をみてくれたに違いない。


 山本家の姉妹は、とにかくマイペースと言われるので、さぞや苦労をかけたろう。


「いつものことなんです……横になっていれば直りますから」


 そんな花屋さんの向こうから。


 ひょいと。


 図体の大きい男が、部屋をのぞきこんでくる。


「うわっ、ダメですよダイさん! ここは女性の部屋なんですからっ!」


 細腕で、一生懸命その身体を押し戻そうとする景子。


 言葉が通じないのに。


 すっかり馴染んだような彼女の姿に、梅は微笑んだのだった。



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