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幼き初恋 暗闇の傷26


「おい。大丈夫か?」


もう一度武尊が問いかける。武尊の助けを借り、身を起こした水蓮は静かに頷いた。


「わたし、一体・・・・」


何も覚えていないのか、ボーっと辺りを見渡す。


「水蓮・・・・」


水蓮の耳にやっと木蓮の声が届く。


「お母様!」


水蓮は急いで駆け寄り、伸ばされた手を握ろうとする。しかし、自分の手を見て水蓮は愕然とした。先ほどまで綺麗だった手が何故か血にまみれていたからだ。


「・・・・私の手。血まみれ。どうして・・・・」


その血が引き金となり、先ほどの記憶がドッと津波のように押し寄せてきた。


「そう・・だ・・・。わたし、人を殺したんだ。・・・あの人も、この人もわたしがやったんだ。わたしが殺したんだ・・・・・ころ・・・し・・・・」


混乱した中で自分が人を殺した事実を認識すると耐え切れなくなったのか水蓮は絶叫した。


「いやぁぁぁぁぁぁぁーーーー!」


水蓮は自分の両手から目が離せなくなっていた。


「わたしが殺した。わたしがコロシタ。みんな、みんな、みんな殺した」


水蓮の目からとめどなく涙がこぼれる。


『水蓮!』


頭の中に琥珀の呼び声が聞こえる。


『水蓮!』


救いを求めるように水蓮は琥珀の声がする方に向かって呟いた。


「・・・・たすけて」


「水・・・蓮・・・・」


泣き続ける水蓮の手の上に木蓮の手が触れる。


「・・・・・おかあさま・・・・」


「よか・・・ったわ。あなた・・が無事で」


木蓮が水蓮に微笑みかける。


「おかあさま」


「水蓮・・・・これ・・だけ・・・・は覚えていて・・・・あなたの・・・その・・・力・・・は・・神様が・・・下さったもの・・・・だから、その・・・力は・・・・誰か・・・・大切な・・人・・を・・守るために・・・使いなさい。その力に・・・ふりまわされて・・・は・・・だめ。血を・・戦いを・・・求めては・・・だめ。約束・・・。ゴホッ」


「お母様!」


「木蓮!」


傷は肺にまで達しているようで木蓮は何度も血を吐きながら、最後の言葉を水蓮に伝えた。


「武尊・・・おねが・・・。この子に・・・武を・・・・心を・・教えて・・・・」


「・・・・わかった。まかせておけ」


武尊の言葉を聞くと、木蓮は安心したのか静かに瞼を閉じていく。


「みんな・・・伝え・・・。・・・・・愛してる」


二人に見守られながら、木蓮は静かに息を引き取った。そして、劉嶺たちが駆け込んでくるまで、武尊は月を見上げ、佇み、水蓮は無言で木蓮に寄り添っていた。とめどない涙の海に身を任せたまま。


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