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幼き初恋 暗闇の傷15


舞が終わり、控え室から飛び出した水蓮は駆け足で廊下を進む。


『とりあえず、外に出て観覧席の出口付近を捜してみよう』


紫連とは毎日会えるわけではない。いつも、劉嶺や信明が皇慈院に用事がある時だけ、他の人間に見つからないようにこっそり付いていく。木蓮にバレて阻止されることも多々あり。だからこそ、こうやって、堂々と会える機会なんて、なかなか無い。


『もうーなんて長い廊下なの。早く外に出たいのにー』


心の中で城の廊下に文句を言いながら水蓮は駆けていた。


『この角を曲がれば、外に出られる』


水蓮は、走るスピードをあげ、右へ曲がった。


ドン!


同じく角を曲がってこちらへ来た人と水蓮は正面衝突してしまった。


「きゃっ」


ぶつかった衝撃で体が傾く。


『たおれる!』


水蓮は目をつぶり続いてくるだろう衝撃の第二波に備える。しかし、待っても一向に衝撃はこない。そっと目を開けると、男の人に腕を掴まれ背中を支えられていた。


「大丈夫?」


その男の人に水蓮は顔を覗き込まれた。年は紫連や青笙よりやや上だろうか。

その人は春の陽だまりのような暖かい笑顔のとても美しい少年だった。

まるで物語から抜け出した貴公子のよう。水蓮はポカンと口を開けて、その人の顔を見つめている。不審に思った彼はもう一度水蓮に聞く。


「大丈夫? どこか痛いところは?」


優しく聞かれ、ハッと我に返った水蓮の顔はみるみる赤くなっていった。


「きゃーーー!」


今の状況を把握した水蓮は思いっきり叫びながら、彼の体から飛びのいた。


『恥ずかしい』


「君?」


彼から話しかけられ、水蓮はお礼さえも言っていなかったことに気がついた。


「あっ、はい。あの、大丈夫です。すみません、急いでいたものですから。本当にすみませんでした。じゃあ、さようなら!」


水蓮はガバッと頭を下げると、そのまま、男の人の横を通り過ぎて逃げるように立ち去っていった。


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