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第65話:ソロキャンプと心の整理

いつもお読みいただきありがとうございます。

神社祭で騒がしかった日々を終え、一度自分をリセットするためのソロキャンプ回です。

実録ベースのこだわりキャンプ飯とともに、楓の迷走する脳内をお楽しみください。


 神社祭で色々な事がありすぎた。

 土日を迎えたので、一度頭を冷やそう。

 こんな時はキャンプに限る。


 昨今のキャンプブームで有料化が進む中、これから行く場所は貴重な無料キャンプ場だ。

 トイレは綺麗だし炊事場もある。


 しいていうなら、住宅地からすぐの場所なので、中学校や商業高校が隣接しているのが玉にキズだが、その分買い出しは楽だ。

 すぐ横には天塩川が流れているので、ロケーションは悪くない。



「よし、準備するか」



 野菜は家の畑からナス、トマト、タマネギ、長ネギを適当に収穫。

 いつものキャンプセットを背負い、愛車に跨ってレッツゴー!


 釣竿をリュックの横に差し込んで走っていたので、目立ちまくりだった。

 確かに、アンテナのように見え、まるでラジコンカーのようだったんだろう。


 道中のスーパーで鶏もも肉と食パン。

 それから惣菜コーナーのカニクリームコロッケが仲間になりたそうにこちらを見ているので、パーティーに加えてやった。

 いざキャンプ地へ。



 設営場所は、他のキャンパーから離れた日陰、木の根がない平坦な場所に決定。

 ここで秘密道具の登場だ。



「どこでもテントー!」



 袋から取り出し、空高くぶん投げれば一気に開くポップアップテント!

 杭で固定し、蚊取り線香を入り口の左右に設置すれば、俺の城の完成だ。



 薪は、場内に置かれた剪定済みの枝(無料)を拝借。

 折りたたみ式の焚き火台に、文化焚き付けを一欠片。乾いた小枝を三角に組み上げてライターで着火。


 あー、火打ち石やメタルマッチ使うと思ったしょ?

 つかなくて焦ったり、最終的にライターに頼るあの敗北感は、今日はいらないのだ。



 火がついたら、じっくり育てる。

 細い枝、中くらい、太い枝。

 じゃんじゃんいけー!



 少しずつ傾く日を見ながら、料理に取り掛かる。

 もも肉にクレイジーな塩やコショウを振り、ナスは輪切り、玉ねぎは角切りに。

 ご自慢のスキレットに油を引き、肉を焼く。


 ジュー! チリチリ!


 肉の香ばしい香りと、跳ねた油が爆ぜる音。

 その隙間で野菜をじっくり育てる。

 その横でお湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れる。


挿絵(By みてみん)


 肉が焼けるまでの間は……。

 待ちに待った「待ち時間」だー!



 コーヒーをすすりながら、これからのことを考える。


(お祭りでのさっちゃん、可愛かったなぁ。じいちゃん達からの受けも良かったし……)


(ハルちゃんは綺麗だったな。おんぶした時のドキドキとか、部屋で倒れ込んできた時のこととか……)


 あんな二人との未来なんてあるのかな。

 俺は二人のことを好きなのかな?


 二人……でいいんだよな?



(楓くん! 私がいるよー、愛美だよー!)



 んー、何かひっかかる。忘れてるような……。



「肉! 焦げる!」



(えーっ! そっち? 私はー?……)



 危ない、真っ黒になるところだった。

 さてさて、トマトを角切りにして投入し、グツグツ煮て、塩コショウで整える。


 出来上がり!

 スキレットから上がる香ばしい肉の匂いと、トマトのフルーティーな酸味。

 この美味さは食べなくてもわかる。

 食べるけど。


 ナイフとフォークでいただく。

 溢れる肉汁、最高だ。その旨味を吸った玉ねぎとナス……サイコーだー!


 半分ほど食べたら、肉と野菜を寄せて、卵を落としてとろけるチーズを載せて蓋をし、再び焚き火へ!


 しばらくして蓋を開けると、チーズがしっかり溶けて、端の方はカリカリに焦げている。

 そこだけ先に食べると、まるでチーズスナック菓子のようでうまい!


 仕上げにトンカツソースを回し入れればフィニッシュだ。

 肉にチーズを、半熟卵の黄身をたっぷりと絡めて、一気に頬張る。


 ……間違いない。

 濃厚なディナーを楽しみ、満足満足。



 辺りは陽も落ちて、一面の星空と優しく揺れる炎が周囲を照らす。


 夏の大三角形はもちろん、天の川もはっきり見える。

 まあ、星については街灯の光もない自分の家で見るのが、一番綺麗だが。


 ソロキャンプで見る夜空はまた格別だ。

 焚き火のはぜる音と炎のゆらぎ。そして、満天の星空。

 自分を見つめ直すには、最高のシチュエーションだ。


 中学の時の嫌な思い出が、自分を臆病にさせている。

 怖いんだ。

 好きになるのも、なられるのも。


 自分が本当に好きな人か……。

 今は二人とも素敵すぎて、どちらかを選ぶなんてできない。



 ……って、俺ちょっと意識しすぎじゃない!?

 一年生から告白されて、ただ舞い上がってるだけじゃん!


 恋愛ゲームの主人公気取りか? 二人とも素敵、じゃないよ。



「『選ぶことができない』って、俺は何様だ! 何目線だよ!」



 そもそも相手にされているかも怪しいのに、独りで究極の選択を迫られている自分の脳内がおめでたすぎて、焚き火にダイブしたくなる。



「恥ずかしーっ!」



 夜のキャンプ場で、俺は一人、寝袋の中で芋虫のようにのたうち回るのであった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

一人の夜のはずが、自意識過剰な脳内会議で一番騒がしい夜になってしまった楓でした。

皆様もキャンプでの「飯テロ」と「焦げたチーズ」にはご注意ください。


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