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第24.5話:【元旦特別編】正夢のドラグーン〜2人と奏でる異世界の初日の出〜

あけましておめでとうございます!

2026年、新年最初の投稿は「元旦特別コラボ企画」をお届けします。


先ほど(午前7時)に公開された、

『コンプレックスは最強の個性!?』側のエピソード。

あちらでナバールと出会った「りん」が、今度はハルちゃん(春日葵)と、副局長のさっちゃん(井上さつき)を連れて……?


本作らしい「ちょっとキモくて、でも少しだけエモい」

一夜限りの奇跡の物語をお楽しみください。


本年も「りん」たちの青春を、どうぞよろしくお願いいたします!


 元旦、午前六時。

 俺は、ありえない体験をした。

 

 目の前で巨大な竜がトラックを掴んで空を飛び、異世界の王様と初日の出を拝んだのだ。

 ……普通なら「寒さで頭がどうかした」で済む話だが、別れ際に「俺の相棒だ」と手渡したドラムスティックは、確かに手元からなくなっていた。


「……布団に入って寝よう。きっとこれは、質の悪い幻覚だ」


 俺は冷え切った体を布団に滑り込ませた。

 まどろみの中で、ナバールが消え際に言った言葉がリフレインする。

『いつか、君たちが奏でる音楽を聴いてみたい』


 ――そんなの、いつになるか分かんねーよ。

 意識が、深い闇に落ちていった。


 ◇


 次に目を開けた時、そこは自分の部屋ではなかった。

 見上げるほど高い天井。大理石の床。

 窓の外には、ファンタジー映画でも見ないような、高くそびえ立つ白亜の城下町が広がっている。


「……マジか。まだ続いてんのかよ」


 呆然と立ち尽くす俺の背後に、聞き覚えのある声が響いた。


「待っていたよ、楓」


 振り返ると、そこには豪華な正装に身を包んだナバールがいた。

 傍らには、吹奏楽局のメンバーが楽器を持って並んでいる。


「……っ!?」


 そして、その中心にいたのはハルちゃんとさっちゃんだった。

 いつもは制服か、ジャージ姿しか見ていない二人が、今日はお姫様のようなドレスに身を包んでいる。


 清楚なブルーのドレスで少し照れているハルちゃん。

 対照的に、華やかな赤いドレスを堂々と着こなして不敵に笑うさっちゃん。

 ……正直、二人とも綺麗すぎて直視できない。なにこれ、夢なら一生醒めないでほしい。


「ナバール……。ここ、君の国なんだな」


「ああ。ドラグーン王国へようこそ。……約束しただろう? 君の音を聴かせてくれと」


 ナバールが微笑み、俺の両隣に立つ二人へ目を向けた。

「そちらの二人が、君の言っていた大切な支えかな?」


 俺は少し照れくさかったが、二人の顔を見てナバールに向き直った。

「ああ。紹介するよ。フルートのハルちゃん……春日葵。俺が迷った時、いつも隣で支えてくれる。そしてサックスのさっちゃん……井上さつき。俺の右腕として、副局長として吹奏楽局を引っ張ってくれる、頼れる相棒だ」


 ハルちゃんは顔を真っ赤にしてお辞儀をし、さっちゃんは「よろしくね、王様!」なんて明るく手を振っている。


「なるほど……。楓、君が孤独な道に負けずにいられる理由が分かったよ。君には、心から信頼できる『二人の翼』がいるんだね」


 ナバールが右手を掲げると、背後の巨大な扉が開き、王宮のテラスが姿を現した。

「さあ、みんな。君たちの奏でる『音』で、この国に新しい年を告げてくれないか?」


 俺と彼女たちは顔を見合わせた。不思議と、緊張はなかった。

 

 合図と共に、音が放たれる。

 北海道の田舎道で、悔しさと孤独の中で磨いてきた音が、異世界の澄んだ空気に溶け込んでいく。

 守護竜セトが空を舞い、咆哮が低音パートと共鳴する。

 観衆のどよめきが、最高の拍手へと変わっていった。


 ◇


 演奏が終わり、鳴り止まない拍手の中で、俺とナバールはテラスの縁に並んだ。


「なぁ、ナバール。君とは今日初めて会ったはずなのに……なんだか、ずっと前から知り合いだったみたいな気分だよ」


「奇遇だな、楓。僕も同じことを考えていた。きっと、僕たちは違う世界で、同じ重さの荷物を背負って歩いているからだろう」


 ナバールは腰の剣に手をかけ、遠い空を見つめる。

「君は北海道の道を、僕はドラグーンの玉座を。……場所は違っても、僕たちは繋がっている」


「……ああ。そうだな。君が頑張ってるって思うだけで、俺も明日からの練習、もう少し踏ん張れそうだよ」


 その時、周囲の景色がゆっくりと白く霞み始めた。


「……もう、戻る時間か」


「どうやら、お別れのようだね。……でも、楓。これは終わりじゃない。次は夢の中ではなく、もっと確かな場所でまた会おう。……これを、君に」


 ナバールが俺の手に握らせたのは、青く優しく光る、見たこともないほど透き通った魔導石だった。


「これは僕の加護だ。もし、君が道に迷いそうになった時は、違う世界で共に歩む僕がいることを思い出してほしい」


 俺は、さっきナバールに預けた自分のスティックを思い出し、少し照れくさそうに笑った。


「……ありがとう。大切にするよ。ナバールも……そのスティック、もしよかったら時々眺めてやって。またな、ナバール。今日会えて、本当によかった」


「ああ、また会おう。僕の友達」


 ◇


 眩しい光に目を細めると、そこはいつもの自分の部屋だった。

 枕元でスマホが激しく震えている。ハルちゃんとさっちゃん、二人からのグループ通話の着信だ。

 通話ボタンを押すと、二人の興奮した声が同時に飛び込んできた。


『……あ、りん? 元旦から突然ごめんね。あの、なんだかすごく不思議な夢を見て……あまりにリアルだったから、思わずりんの声が聴きたくなっちゃって……』

 少し遠慮がちで、どこか困惑したようなハルちゃんの声。


『ちょっとりん、私もなのよ! 二人で今その話をしてたんだけど、信じられないくらい共通点があるの。とんでもなく大きなお城のテラスで、私たち、見たこともないドレスを着て演奏してた気がするんだけど……』

 さっちゃんの声も、いつになく真剣で驚きに満ちている。


「……お城で演奏、か」


『そうなの! りんが指揮をして、周りには騎士様みたいな人たちがたくさんいて……。それに、私たちの演奏をすごく優しく見守ってくれてた人がいたの。キラキラした正装をしてたから、たぶんあの国の王様だと思うんだけど……』


『そうそう、その王様! 私たちに「君たちの音を聴かせてくれ」って言った人。名前、なんて言ったっけ……ナントカール、みたいな……』


 俺は心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、上着のポケットに手を突っ込んだ。

 そこには、夢で手渡されたはずの、青く優しく光る石が一つ、確かに転がっていた。


「……ナバール、だろ。いい奴だったよな」


『……えっ?』

『……ちょ、なんでりん、その名前を知ってるのよ!?』


 電話の向こうで、二人が息を呑むのがはっきりとわかった。


「……さあな。俺もよくわかんねーけど。三人で同じ夢見てたなら、きっと今年はいい一年になるんじゃねーの? 最高の演奏だったしな」


 二人の「ちょっ、りん、詳しく教えなさいよ!」という騒がしい声を聴きながら、俺は青い石をそっと握りしめた。

 北海道の刺すような冷気の中で、その石だけが、あいつの体温みたいに優しく温かかった。


「あー……その、今年もよろしくな、二人とも」


『……うん、今年もよろしくね、りん!』

『今年もこき使ってあげるから覚悟しなさいよ、りん!』


 二つの世界に、新しい一年の太陽が昇る。

新年あけましておめでとうございます!

コラボエピソード、楽しんでいただけましたでしょうか。


立場は違えど、重圧と戦う二人の「リーダー」の絆。

そして夢の中でのハルちゃんとさつきのドレス姿……。

新年一発目、三人にとって忘れられない朝になったようです。


さて、この物語の「前編(ナバール視点)」は、

一足先にこちらの作品で公開されております!


▼コラボ先:ナバール視点はこちら

『コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜』

https://ncode.syosetu.com/n6384ll/


ナバールたちがどうやって北海道に飛ばされ、どうやってトラックで運ばれたのか(笑)

ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【大切なお知らせ】

明日、1月2日より更新時間を以下の通り変更いたします。


新更新時間:毎日 21:10 頃

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本年も、どうぞよろしくお願いいたします!


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