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第15話:運命の歯車は加速しない

高文連、地区大会当日!

全道大会への切符をかけた戦いの火蓋が切って落とされます。

自由すぎる顧問の行動に振り回されつつも、結果発表の後、思わぬ展開が待っていました。


 さあ、今日は待ちに待った高文連の本番だ。


 昨日の夜、龍弥にぶちかました「熱血指導」の件は、あいつがみんなには秘密にしたいと言っていた。

 俺も一旦、記憶の隅に追いやって、今日のステージに集中することにしよう!



 高文連地区大会。

 これは各校の技術や表現力に対し、審査員が厳しい評価を下す場所だ。

 選ばれた学校だけが全道大会への切符を手にできる、いわば文化部のインターハイ予選。


 ……なのだが。

 実態は、かなり「お祭り」に近い。


 真面目な演奏が終われば、そこからは交流会という名の親睦タイムが始まる。

 クイズ大会などのイベントが目白押しで、ピリついた空気はどこにもない。



 お昼休憩を挟んで、午後の部が始まろうとしている時のことだ。

 ふと見ると、顧問の先生と数人の生徒の姿が見当たらない。


 演奏順にはまだ余裕があるが、どこへ行ったんだ?

 と、そこへ汗だくの顧問たちが会場に駆け込んできた。


「いやー、ちょっと遠くに美味いラーメン屋があるって聞いたから、行ってきたよ!」


 先生、あんた……この遠征を楽しみすぎだろ。

 生徒を引き連れて、しかも全速力でラーメンを食いに行く顧問。

 不動高校の自由すぎる校風は、どうやら大人も同じらしい。



 午後の部も順調に進み、学校紹介のコーナーがやってきた。

 副局長である俺もマイクを握り、他校の生徒たちの前でスピーチをこなす。


 俺、意外にこういうのできちゃうタイプなのよね。

 中学時代も生徒会長やってたし。



 そして、いよいよ運命の結果発表。


「全道大会出場校は――不動高校!」


 やった! 今年も無事に全道大会への切符を掴み取った。

 会場が歓喜に沸き、喜びの余韻に浸る間もなく、撤収作業と片付けが始まる。



 そんな忙しない最中、ふいに背後から声をかけられた。


「あの……写真、一緒にいいですか?」


 ん?

 まさか、俺のことか?


 振り返ると、そこには他校の制服を着た、清楚系の女子生徒が立っていた。

 はにかみながら俺を見つめる彼女。


 ……まじか、ついに俺にもモテ期が到来したのか!?


「あ、はい、ぜひ!」


 俺は二つ返事で快諾し、彼女の隣に並んだ。

 カシャリと収まる、二人だけの記念写真。


 彼女がどこの学校かを聞き、「撮った写真、後で送りますね」と、連絡先を交換しようとした……その時だった。



「おーい、竜胆! ミーティングやるからすぐに集まれ!」



 背後から響く、空気の読めない無情な声。

 「えー! 今いいところなのに!」と心の中で叫ぶが、副局長の立場上、無視するわけにもいかない。


「ごめん! また後で!」


 俺は彼女に手を振り、後ろ髪を引かれる思いで集合場所へと走った。



 ……残念ながら、その後、彼女と再会することは二度と無かった。


 ひょっとして今のが、巷で噂の美少女イベントだったのか?

 俺の人生における、運命の人だったのか?


 あのまま連絡先を交換して、LIMEのやり取りが始まって。

『僕たちの運命の歯車は加速する』みたいな甘酸っぱいエンディングがあって、読者が「来週が待ちきれない!」と悶絶する展開になるはずだったのに!!



 その時、俺の脳内にある格言が響き渡った。



『チャンスって、誰にでも与えられるものじゃない。今掴まないと、お前は絶対後悔するぞ』


 

 昨日の夜、俺がしたり顔で龍弥に説教した台詞だ。



 まさか、よりによって今日このタイミングで。

 特大のブーメランとなって、自分の胸に深々と突き刺さるとは。



 俺の運命の歯車は、加速する前に完全に脱輪してしまった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


かっこよく後輩の背中を押した翌日に、まさか自分の放った言葉に自分が刺されることになるとは……。

「チャンスは今掴め」。

あまりにも重すぎる自業自得な教訓を胸に、楓の稚内遠征は幕を閉じます。


全道大会進出を決めた不動高校。

次なる舞台での彼らの活躍(と、楓の迷走)にご期待ください!


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