幕間1 桐谷一花①
桐谷一花は日本人である。
両親共に日本生まれ日本育ち。
小中高と地元の学校に通い、成績はボチボチ。
見た目は長いくせ毛のついた髪と少々大きめの胸が目立つ位で恐らく平均的な少女と言えるであろう。
先日祖父が無くなった。
過去ゲーム会社で働いていた祖父の家にはレトロなゲームが多く置いてあった。
親からはあまりお小遣いが貰えなかったので中学生の頃はよく祖父の家へ遊びに行っていた。
私はその中でもフルダイブ型のゲーム機が特にお気に入りでよく遊ばせて貰っていた。
祖父の家にあったゲームは古いゲームなので少々操作に違和感があるゲームばかりだったがそれでも私は楽しかった。
祖父が無くなった後、遺品整理をしていたら引き出しから1本のゲームソフトが出てきた。
『マジック&クエスト』とパッケージに書かれていたチープな雰囲気のゲーム。調べて見た所どうやら開発が中止になった幻のゲームらしい。
そんなものなぜ祖父が持っていたのか、何故隠していたのか。
気になった私はプレイしてみる事にした。
フルダイブ用のVR機器を取り付けてゲームを起動した時、私はいつもとは違う違和感を感じた。
そして目が覚めると、私は知らない街のど真ん中に立っていた。
最初はRPGゲームの中だと思ったが、直ぐにこれは現実だと気づく。
そして気づいてしまった私は恐怖に襲われた。
知らない場所で私1人。お金も恐らく持っていない無い。
この国がどういう国なのか、それすらも分からない。
怖い。怖かった。
1人は怖い。
幸い私は魔法使いという設定のようで杖をもっていた。
持ち物を調べたらスマホを持っていたが、残念な事に電話が出来ない所かネットすら繋がっていなかった。
アプリはステータス確認と書かれたアプリと時計くらい。
まるで仕事で使う業務用のスマホみたいだ。
あと恐らくこの世界の通貨も持っていた。
1円も持っていないと思ったので少し安心したが、ステータスのアプリ内に所持金の表示があり1500円と書かれていたので恐らくそんなに大金では無いみたいだ。
手持ちのお金が尽きる前にお金を稼がなくてはいけない。
半狂乱になりかけながら街を彷徨っていると私は冒険者ギルドのような場所を見つけた。
私は杖を強く握りしめてギルドの中に入った。
ギルドに入った私は簡単な説明を受けたあとスムーズにギルドの入会手続きが済んだ。
しかし入会費を取られてしまい、もうお金が殆ど残っていなかった。
このままだと本当に不味い。
私は先程教えてもらったクエストボードに向かった。
1歩1歩、歩く旅に底なしの沼にハマっていくような、そんな焦燥感を感じている。
家族に会いたい。家に帰りたい。助けて欲しい。
絶望の縁に立たされていた私に、重そうな装備を身にまとった淡いブロンドヘアーの綺麗な女性が声を掛けてきた。
「君1人?良かったらお姉さんとこの後遊ばない?」
気の抜けるような、絵に書いたようなナンパだった。
しかし私は、1人で不安で、怖くて、消えてしまいそうだった私には。
光に見えたのだった。




