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ぼっち冒険者の私が魔法職の少女をナンパしてみた  作者: 神子さん
第二章 ダンジョン攻略編

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第19話 エーデル・アメジスト

 立ち話もなんだということで、ベアトリクスとイチカとエーデルはギルドの集会所で話をすることにした。

 ギルドの受付で今日のクエストの報酬を受け取り、早朝ミカと会話していた席と同じ席を使用させてもらう。


「改めまして、私はエーデル・アメジスト。この街の有名なアメジスト家のドラ娘よ」

「自己紹介で自分をドラ娘と紹介されても反応に困るのだが。私はベアトリクスだ」

「キリタニ・イチカです」


 自称名家のドラ娘、エーデル・アメジストは私達の挨拶を聞いてふんすふんすと頷いていた。


「イチカにベアトリクスね、よろしく!それで魔術のレッスンを受けたいというのはイチカの方でいいのかしら?」

「はい!」


 私もちょっと気にはなるが、この前イチカと魔道具屋に足を運んだ際に才能なしの烙印を押されてしまった為、今手を挙げる気持ちにはなれなかった。


「なるほどね!でも私の見立てではあなた相当魔術を使い込んでいるように見えるのだけど本当に私のレッスンが必要なのかしら?」


 エーデルはイチカを観察しながら訝しんでいた。


「えっと……実は私魔法の師匠が今までいなくて、聖職者のお友達に私の魔法は他の術者と比べるとスマートじゃないといわれたので一度有識者の知識をお借りしたいなと思っていました」

「師匠がいない。田舎の我流魔術師といったところね」


 イチカの説明を聞いたエーデルはうんうんと大袈裟に首を縦に振る。

 その勢いで被っていた帽子がテーブルに落ちたが、気にせず話を続けていた。


「いいわ!私が師匠になってあげる!」

「ほんとですか!」


 自信満々にそう宣言したエーデルにイチカは目をキラキラさせていた。


「勿論よ!あなたは冒険者でこの街にはずっとはいないだろうから受講料は一括50000Gで良いわよ!」

「ご!50000G!?」


 私はその法外な受講料に目玉が飛び出た。

 私達は今次のダンジョン挑戦の為にお金を稼ごうとしている状況である。

 実際は私の貯金があるのでアイテム代などはどうにでもなるのだが、信用できない情報商材にお金を出す余裕はない。

 ちなみに、ポーション瓶が一本1500G、エーテルが1本5500Gである。

 じっくり腰を据えて教えを乞える状況ならばリーズナブルな料金だが、精々数日程のレッスンで払える金額ではない。


「悪いが別の人物を当たることにしよう。我々は今ダンジョン攻略に向けて資金を集めているところだ。君の実力がわからないのにそんな大金を出す余裕はない」


 私の言葉を聞いたエーデルは、待ってましたと言わんばかりにニヤリと笑った。


「私の実力がわかればいいのね!」


 エーデルが音を立てて椅子を動かして勢いよく立ち上がった。


「じゃあベアトリクス!私と勝負しなさい!私が勝ったら実力は文句ないわよね!」

「嫌だけど」


 エーデルの提案を私はバッサリと断った。


「なんで!?」

「なんでって、魔術師と剣士が勝負しても面白くないだろ」


 訓練として魔術師と剣士が戦う事には意味があるが、勝負としては正直しょっぱい。

 射程や運動技能が全然違う我々の勝負は、最初の間合いで全てが決まる。

 剣士の間合いからスタートすれば剣士が勝し、魔術師の射程が生かせるスタートなら術者に辿り着く前に剣士が圧殺される。

 それだけだ。


「私に勝ったら受講料はただでいいわよ」

「いきなりタダといわれる方が更に怪しく感じる」

「なによ!逃げるの!?卑怯者!」

「なんとでも言え。私とて仲間との約束を守らねばならん」


 成り行きとはいえ実質的な臨時パーティを組むことになったミカとの約束を万全な状態で果たすためにはこんなところで変人に油を売る余裕はないのだ。


「何よ!弱虫!雑魚!バカ!まぬけ!ハゲ!」

「……」


 幼稚な罵詈雑言を上げるエーデルを無視して、私は席を立とうとする。


「行くぞイチカ」

「ベアさん……でも……」


 イチカは半泣きで喚いているエーデルを見ながらおろおろしていた。

 だが、あんなヤバい奴に教えを乞うのは元々間違っていたという証明として、あの姿を目に焼き付けるのも悪くない。


「聖職者にバケモノ扱いされそうな妖怪!!!」

「……」


 無視だ、無視。


「ぐすん……コミュ障でぼっち拗らせて一生恋人もできなさそうな変人!!!」

「……」


 ……は?


「上等だ!その勝負受けてやるよ!!!ぶち殺してやる!!!」


 ふざけやがって!私が一生恋人できないだと!?

 今の私にとって一番デリケートなところを刺激されて、私は頭に血が上った。


「その気になったのね!?いいわよ!かかってきなさい!」


 私の豹変っぷりにエーデルどころかイチカまで顔を青くしていたが、それでもエーデルは気丈に振舞ってきた。

 

「ベアさん……」


 完全に話の流れに置いて行かれたイチカは、呆然と私とエーデルを眺めていた。



 今日はもう日が暮れるので、明日の昼頃に図書館近くの広場で集合することになった。

 珍しくイライラしている私がドカドカと地面に八つ当たりをしながら歩いてると後ろからイチカが話しかけてきた。


「あの……酷いことを言われて怒っているのはわかるんですけど……あまりエーデルさんを責めないで上げてください」

「怒ってないが」

「その返しは怒ってる人のする返事です。ちょっと話しただけですけど、たぶんエーデルさんは悪い人じゃないはずですから」


 イチカはそういうが、出会ったばかりでいい人かどうかがわかるわけもない。

 人間の印象というものは第一印象で決まる。

 そしてこの数分で私のエーデルに対する印象はかなり悪いものとなっているので、このイメージを払拭するのは中々難しいだろう。

 だが、イチカの前でいつまでもイライラしているのはあまりかっこよくない。

 私は一度深呼吸をして心の落ち着きを取り戻そうする。


「ふぅ~。イライラして悪かったなイチカ。私の機嫌が悪いと君も居心地が悪かっただろう」

「それはそうですね」


 すんっとした顔でイチカは私の発言を肯定する。


「うぐっ!すまない。以後気を付けるよ」

「そうしてください!私にはベアさんのところしか居場所がないんですから!居心地がよくないと困るんです!」


 頬っぺたを膨らませて可愛らしく怒ってますよアピールをしてきた。


 イチカは今、私しか居場所がない、そして普段は居心地が良いといった。

 イチカの何気ない発言で、私の傷ついた自尊心が回復されていく。


「私もイチカと一緒に居れて幸せだよ……結婚しよう」

「あの……その予定はまだないです……」


 イチカの照れている様子が可愛くて、今日の出来事がすべて頭の中から吹き飛んだ。

 私は今幸せだなぁ~と先ほどまでの脳みそ休眠状態に戻り、イチカとイチャイチャ話ながら宿に戻った。

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