表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち冒険者の私が魔法職の少女をナンパしてみた  作者: 神子さん
第二章 ダンジョン攻略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/30

第9話 ダンジョンとお着替え

 イチカの修行生活が始まって4週間が経過した。

 初日は1日で10レベルくらい上がったと喜んでいたイチカが最近はあまりレベルが上がらなくなってきたと言っていたのでこの辺りで1度イチカの基礎能力強化の作業を終了することにした。

 出会った頃はスキル『仲間のピンチ時以外は魔法攻撃力マイナス50%』の影響でゴブリンすら倒せないくらい弱弱だった魔法も成長し、クエストボスを一撃で倒せる程度まで強化されていた。


 リーベルの拠点である私の家から離れて色々な場所を放浪していたので新たな装備を新調する余裕が無かった為、今のイチカに合った装備を用意出来れば更に強力な魔法が使えるようになるだろう。


 最近はめっきり成長を感じなくなってきていた私としては、まだまだ伸び代のあるイチカを羨ましく思っていた。


 そして現在ベアトリクスとイチカはジルの町から更に2つほど町を挟んだ場所にある大都市メタスギアに来ていた。


 ここは始まりの街リーベルから見て東の方角にある街で、この都市の近くにある山脈を超えると、クールル王国の隣国バン帝国がある。

 つまり国境に当たる国なので、街には荒くれた冒険者よりも規律正しい騎士を見かける機会が多い。


 そんな国境近くまで歩いて来たのには理由がある。

 私たち二人でダンジョンに挑戦して見ようと思ったのだ。


「ダンジョンアタックですか?」

「ああ。そろそろ頃合だろう」


 私達はメタスギアにある食堂でご飯を食べながらこれからの予定のすり合わせをしていた。

 イチカは鶏肉のソテーを口に運びながら私に質問した。


「ダンジョン攻略は面白そうでいいと思うんですけど、わざわざこんな遠くまで歩いてくる必要はあったんですか?」

「君の修行も兼ねてるからな。この辺の敵は中々手強かっただろう」

「レベルがあんまり上がらなくなってきてたからすっかり忘れてました」


 そういうとイチカは懐から例の鑑定道具、『スマホ』を取り出してポチポチと弄り始めた。

 なんだろう、食事中にそれを弄るのはなぜだか行儀が悪い気がする。

 冒険者であるイチカに食事のマナーを兎や角言うつもりはないが最初に出会った時のお上品な食べ方のイメージがあるので私は少しモヤモヤした。


「現在の私のレベルが45。ベアさんとのレベル差はようやく折り返し地点を超えた所ですね」

「私のレベルは80だったか」

「80+ですね。この4週間の間でベアさんのEXPも僅かに増えているのでもしかしたらこの+は上限解放待ちの状態なのかも知れないです」

「上限解放?」

「ソシャゲとかでよくあるんですよ。通常のレベル上限を突破する最終進化とか究極進化みたいなシステムが」

「ふむ」


 イチカのいた世界の言葉はよく分からない物が多い。

 なので普段からそれっぽい返事をして誤魔化している。


「それでその上限解放とやらはイチカの世界ではどうやっておこなっているんだ?」

「私の世界っていうかゲームですけど。例えばレアな育成用素材を集めて合成したりとか……あと同じ名前のキャラクターを重ねたりとか……」

「同じ名前……」

「……ベアさんって自分のドッペルゲンガーに会ったことありますか?」

「ドッペルゲンガーというのは敵の姿を模して襲ってくる魔族だったか?すまないが出会った事はないな」

「コピー能力持ちのモンスターもいるんですね」


 ドッペルゲンガー……確か魔王軍の幹部にそういう名前の魔族がいた筈だ。

 魔族は一応モンスターではないのでイチカの発言は誤りであるが訂正する程の事でもない。


「後は自身に与えられた試練を乗り越えたりとかですね」

「私に与えられた試練か」 


 戦闘面で困った事はあまりない。

 なので試練という物にもイマイチピンと来なかった。


「まあ私の事は今はいいさ。それよりも私達が挑むダンジョンについて話をしよう」

「わかりました」


 イチカは頷きスマホをしまった。


「私達が挑むダンジョンは国境の山の麓にある」

「山の麓……巨大なダンジョンなんですか?」

「ダンジョンという括りで見ればそこまでのサイズではないな」


 ダンジョンというものは主に洞窟などの自然に作られた空間が強い魔力を帯びており、魔物を産み出したり魔力由来のレアなアイテムが落ちていたりしている。

 レアなアイテムやダンジョンにしか生息しないモンスターの素材を狙うダンジョン専門の冒険者も少なくは無い。

 多くのダンジョンは上層、中層、下層、最深層と区分けされており、下に行くほど強い敵が現れる。そしてその階層ごとに強力なボスモンスターが配置されている。


「ダンジョンの設定もよくある感じなんですね」

「君の世界でも似たような作りだったのか?」

「ゲームだとよくありましたね。ハクスラ系のアクションゲームとか」

「君のいた世界も過酷なんだな」

「ハクスラダンジョンゲームは私にはあまり肌に合わなかったですね」


 そういいながらイチカがソテーの最後の1切れを口に入れた。


「今から行くダンジョンは街から近い分挑戦する冒険者も多いからボスに遭遇出来るかは分からないが、それならそれでいいだろう」

「ボスが倒されてるかもってことはもうそのダンジョンは攻略されてるんですか?」

「最深部まで辿り着いた冒険者がいるという話は聞いたことがないな。ただ下層のボスは何度か倒されているらしい」

「何度かってことはボスは復活するんですね」

「そういう事だ」


 そしてダンジョンは外よりもモンスターの復帰が早い。

 伸び悩んでいるイチカの強化も今回の目的の1つだ。

 そしてイチカに伝えなくてはいけないことがもう1つある。


「これは私の勝手な都合なのだが、実は仲間とともにダンジョンに挑むというのは私の憧れの1つだったんだ」


 私は照れくさくて顔を背けながら今回ダンジョンに挑んだ私的な理由をイチカに話した。


「今回ここを選んだのもこの街のダンジョンは新人向けの登竜門として有名なダンジョンでな。君と共に挑戦してみたかったからなんだ」

「そっか!今回のダンジョンアタックはベアさんの初めてを私が貰うっていうことなんですね!」

「その言い方はちょっと如何わしく聞こえるが大体そういうことだ」

 

 私とイチカの付き合いも長くなってきており、イチカは時折こういう年相応な言い回しで私をからかうようになってきた。

 スケベな女だ。


「ならいい思い出になるように頑張らないと!です!」

「気負う必要なないが私も楽しみにしているよ」


 私は緊張で乾いた喉を水で潤した。

 こういう自信の本音や想いを人に告げるのは緊張する。

 私は空気を換えるため別の話題をイチカに振った。

 

「そうだ。ダンジョンのような閉鎖空間では炎の魔法はあまり使わない方がいいぞ」

「酸欠が云々ってやつですね」

「そういうことだ」

「なんか炎魔法って使い勝手悪いですよね」

「外で使っても火事になりかねないからな」

「焚き火を起こしたりとか要所要所では便利なんですけどね……」


 イチカがコップの水を飲み終えた所で私は立ち上がった。


「じゃあこの後は久しぶりに装備を買い換えて、ゆっくり休んでから明日ダンジョンに挑むとしよう」

「新しい装備!!!やった!!!」


 イチカの後ろにブンブンと振っている犬のしっぽの幻覚が見えた。

 この後の買い物を楽しみにしてくれるようで何よりだ。




 メタスギアの魔道具屋はリーベルよりも高性能な物が多い。

 というのも強力なモンスターが多い地域ほどいい素材が流通しやすい為、リーベルから離れれば離れる程強力な武器が手に入りやすくなる。


 今回のイチカの装備は、以前被っていた無機質な帽子と違って女の子が被るような可愛らしさがある魔術師のとんがり帽子を被り、フリルの着いた上着の上から小さめのマントを羽織り、装飾の多い青いスカートの中にパニエを履いた姿だった。

 

「ちょっと可愛すぎないか?」

「えへへ〜似合ってます?」

「似合いすぎてもはや凶器だ」

「それは誉め言葉の例えとしてどうなんでしょうか……」

 

 私はイチカの新衣装にメロメロだった。

 お持ち帰りしたい。


 杖も新しく買い換えた。

 以前のロッドは身の丈ほどの大きさだったが、新しい杖は音楽家が使うタクトのような細い杖で取り回しがしやすそうだ。

 そして腰に細身のサーベルが帯刀されていた。


「剣を使うのか?」

「護身用です。この街は騎士の人が多いのでサーベルが安く売ってたいたので」

「まあエンチャント魔法を腐らせるのももったいないしな」


 私としてはイチカに剣を持たせるのはあまり好ましくなかった。

 だが魔力を節約したいダンジョンアタックでは剣で雑魚敵を攻撃出来るのは便利ではある。

 複雑な気持ちを抱えながら、その後特にイチカの剣に触れる事は無かった。


 イチカは大規模な衣替えをした一方で、私は元々使用していた装備に戻っていた。

 久しぶりに装備する鎧や長剣、そして巨大なモンスター用に背中に背負っている大剣の重みは以前よりも重く感じた。


「うーん。最近使用していた装備の方が軽くて楽だったし……あちらの装備に寄せた特注の装備を作りたくなってきた」

「私は今の装備もかっこよくて好きですよ!!!」

「かっこいいか。なら我慢して使うか」


 かっこいいと褒められると気分が良くなる。

 私自身、実はかっこいいと思ったから鎧を装備し始めた。

 ただ微妙に私の立ち回りに合わなかった事や、この装備のせいで恥ずかしいあだ名をつけられた所があるのでやはりそのうち買い換えるかもしれない。


「じゃあ記念撮影しましょ!!!」

「ああ」

 

 ダンジョン攻略に挑むのは明日なのに私が鎧を着用した理由はイチカの記念撮影の為だった。

 イチカがスマホの投写機能に気づいてからは一緒に撮影を求められる機会が増えた。

 旅の思い出を残しておきたいということらしい。

 私も旅の思い出が絵として残るのはうれしい。


「はいチーズ」

「いえーい」


 顔を近づけて二人でピースをしながら写真を撮る。


「なかなかいい写真ですね!」

「そうだな」

「ベアさん最初はぎこちない笑顔だったのに最近は写真慣れしてきましたね」

「ことあるごとに君が写真を撮りたがるからな」


 毎回撮影した写真を見せてもらうのだが、そのたびに恥ずかしい表情を浮かべているのはちょっとカッコが付かなかった。

 なので夜こっそりと鏡の前で笑顔の練習をしていた。


「ベアさんが私の世界に来たらモデルさんとか合うかもしれないですね」

「モデル?」

「新しいお洋服を着て写真を撮ってもらってその写真をお洋服の宣伝に使ってもらう仕事です」

「鎧の試着とか最新の武器を試させてもらえる仕事ということか。それは楽しそうだ」

「アハハハ!コスプレイヤーになってもらうのもいいですね!!!」


 イチカがコロコロ楽しそうに笑う。

 つられて私も笑顔になる。

 こうしているとパーティや恋人とは違う。

 対等な友人のような関係も築けているようで幸せな気持ちになった。

 

 この4週間でイチカとの仲はだいぶ進んだ。

 はじめは私の一目惚れから始まった関係だが、順調に進展していっている。

 

 そして明日、私自身の夢の1つであった仲間とのダンジョン挑戦に挑む。

 イチカと出会ったときに感じた、未来が色づくような予感。

 その予感が現実になりつつあることに私は幸福感で包まれていた。

 

 しかし、初心者の登竜門とはいえ危険なダンジョンへの挑戦だ。このまま浮かれてばかりはいられない。

 

「それじゃあ用も済んだし宿に戻るか」

「はい!」


 クールな先輩キャラに戻ろうと気合を入れてそういったが、私の顔は未だにやけたままであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ