表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/49

目覚める力

次の休みの日。真琴はレイルズに見つからないよう、普段使い慣れた薬草市場の指定された場所にやってきました。レイルズには「ポーションの品質向上に関する珍しい薬草の知識を学ぶ」と伝えてあります。


市場の喧騒から少し離れた路地の奥、古びた倉庫の陰に、柊平は既に立っていました。今日の彼は、黒髪を一つにまとめ、動きやすい服装をしています。


「やあ、真琴さん!ちゃんと来てくれたね!デートじゃないレッスンに!」


柊平は、いつもの調子で真琴を迎えます。


真琴は、周囲を気にするように素早く辺りを見回しました。


「金井さん、声が大きいです。レイさんたちに見られたら困ります」


「ご心配なく。俺たちのリーダー、ヤワンさんは、今頃ロアンと遠出している。レイさんたちが俺を探すはずもないし、万が一見つかったとしても、『東方の魔術師同士、専門知識の交換ですよ』って笑い飛ばせば終わりさ」


柊平はそう言って、真琴の不安を一蹴すると、人懐っこい笑顔で手招きしました。


「さあ、こんなところで立ち話もなんだ。最高のレッスンには、最高の秘密の訓練場が必要でしょう?ちょっと街から離れるけど、誰にも邪魔されない廃墟まで案内しますよ」


真琴は柊平の真剣な瞳を見て、彼の後をついていくことにしました。


二人がたどり着いたのは、街から少し離れた森の中にある、古い石造りの廃墟でした。人通りは全くなく、訓練には最適な場所です。


柊平は周囲の安全を確認すると、真琴に向き直りました。指導者としての彼の目には、いつもの軽薄さはなく、真剣な光が宿っていました。


「じゃあ、まず第一歩だ。真琴さんが今使える最高の攻撃魔法を見せてください。威力は気にしなくていい。コントロールの緻密さを、そのまま撃ち出してみて」


真琴は緊張しながらも、岩に向けて最も使い慣れた基礎的な攻撃魔法、小さな火のファイアボールを放ちました。火の玉は、彼女の魔力制御の精密さを示すかのように、狙った岩の表面に正確に当たり、岩を破壊しましたが、ユーリ程の威力はありませんでした。

「うん。なるほど。コントロールは完璧だ。ポーションの配合と同じで、魔力の粒一つ一つが、真琴さんの思い通りに並んでいる。素晴らしい」


柊平は称賛しました。


柊平は、一本の枝を拾い上げ、地面に図を描きながら説明しました。

「真琴さん。あなたの天恵は、俺の推測だと『世界の理の最適化』だ。ポーション作りで素材のポテンシャルを最大限に引き出すように、あなたの魔法も、『魔力を最小限で、効果を最大化する』ことに特化している」


「でも、今のあなたは、その力を『制御』に使い過ぎている。必要なのは、『構造』を変えることだ」


柊平は、自分の手のひらに小さな火の玉を作り出しました。その火の玉は真琴のものと同じ大きさでしたが、異常なほど密で、重く、光を吸い込むような質感でした。


「見て。これが俺の火の玉。魔力の総量は、あなたと大差ない。でも、その密度が違う。俺は、元々持っている魔力を、さらに圧縮して、一点に集中させる。これは、ポーションの素材の力を限界まで絞り出すのと、同じ原理なんだ」


柊平は、その火の玉を近くの大きな岩に投げつけました。ドシュッという異様な音と共に、小さな火の玉が当たった部分の岩が、拳大の穴を穿たれて砕け散りました。ユーリのような派手な爆発はありませんでしたが、その一点集中型の破壊力は、凄まじいものでした。


「あなたの緻密な制御能力を、魔法の出力を広げるのではなく、『一ヶ所に凝縮する』ことに使うんだ。真琴さんならできる。だって、あなたは完璧な調薬師なんだから」


真琴は、その指導に目から鱗が落ちるのを感じました。彼女はすぐに目を閉じ、柊平の教え通りに魔力の流れを調整し始めました。


最初はうまくいきません。魔力は制御を失ってただ散逸するか、威力が全く出ないか。


「違う、真琴さん!もっと強く、一点に押し込め!あなたの持つポーションの力は、たった一つの『核』に凝縮されているでしょう?それと同じだよ!」


柊平は、熱を込めて指導します。


真琴は、脳裏にポーション作りの瞬間を思い浮かべました。薬草の膨大な力を、小さな薬液に完璧に封じ込めるあの感覚。


その瞬間、真琴の体内の魔力制御回路が、カチリと音を立てて繋がったような感覚を覚えました。


彼女は目を開き、小さな火の玉を、再び岩に向かって放ちました。


ブゥン、という低く、重い空気の振動と共に飛んでいった火の玉は、バチッという乾いた音を立てて岩に衝突しました。岩には、柊平の火の玉よりもわずかに小さいものの、深く鋭いクレーターが穿たれました。


真琴は、自分の放った魔法の破壊力に、驚きの声を上げました。


「すごい…!威力が、こんなに…!」


柊平は、両手を広げ、豪快に笑いながら真琴に駆け寄りました。


「やっぱりね! 俺の目に狂いはなかった!真琴さん!あなたは本当にすごい才能を持っている!ポーションだけじゃなく、攻撃魔法師としても、トップランカーになれる逸材ですよ!」


柊平の心からの喜びと、的確な指導のおかげで、真琴は心の底から解放感を覚えました。長年、自分の能力の限界だと思っていた壁を、柊平の助けで初めて超えられたからです。この瞬間、真琴の中で柊平への警戒心は薄れ、「秘密の師」としての信頼と、同胞としての親密さが生まれていきました。


レッスンを終え、薬草市場近くで別れる際、柊平は汗を拭いながら、真琴に優しく声をかけました。


「今日はありがとう。俺にとっても、最高に楽しい時間だったよ。真琴さんの魔法の成長を見るのは、自分のことのように嬉しい」


「こちらこそ、ありがとうございました、金井さん。私の魔法の可能性に気づいてくれて…」


真琴は感謝を述べた後、念を押しました。


「次のレッスンもお願いします。でも、あくまで情報交換とレッスンですからね」


真琴の「デートではない」という牽制に対し、柊平は笑みを崩しませんでした。


「もちろんです、真琴さん。でもね、俺はレッスンを通して、あなたの魂の強さをもっと知りたいだけなんですよ。俺が真琴さんの真の理解者だという豪語は、揺るぎませんから」


柊平は、真琴の心を開かせるために、指導という最も効果的な手段を見つけました。真琴の心には、柊平への感謝と、レイルズへの後ろめたさ、そして、手に入れた新しい力への興奮が渦巻くのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ