合同任務の提案
翌日。セイブライフのメンバーが冒険者ギルドで討伐依頼を探していると、受付の前でちょうど『流星の雫』のメンバーとばったり会いました。
「おお、レイさん!これは奇遇だ」
ヤワン・イベルトは、がっしりした体躯に似合わず、穏やかな笑みを浮かべました。彼の隣には、ロアン・ザックリーズと、黒髪をまとめた金井柊平も立っています。柊平は真琴に気づくと、すぐにウィンクをしました。
「真琴さん、またお会いしましたね!今日の調薬の進捗は?」
真琴が軽く会釈するのを見て、ヤワンはすぐに柊平の不躾な行動を遮るようにレイルズに話しかけました。
「レイさん。実はちょうど、良い話がある。我々も手が空いたところで、一つ、合同で少し大きな仕事を受けないかと。最近、このエリアの奥地で、珍しい素材を持つ魔獣の群れが増えているという報告がありましてね」
ヤワンは、合同任務のメリットを提示しました。双方にタンクと魔術師が揃っているため、難易度の高いダンジョンに深く潜るには理想的な布陣です。断る理由もなく、たまには貴重な素材を手に入れることができる旨味のある話だったので、レイルズは提案を受け入れることにしました。
「ヤワン殿の提案、受けさせてもらう。素材は公平に分けるということでよろしいか」
「もちろんです」
ヤワンは力強く頷きました。
合同任務は翌々日から開始することになり、一日かけて必要な食料や薬材を調達することになりました。真琴が調理を担当するため、買い出しには食材のプロである真琴が同行することに。お財布役として、レイルズとヤワンも真琴と一緒に行くことになりました。
市場は活気に満ちていましたが、二人のリーダーと真琴という組み合わせは、自然と柊平の話へと向かいました。
「上沢さん、この前の情報交換では、柊平が失礼なことを言わなかっただろうか。あいつ、ああ見えてデリカシーがないところがある」
ヤワンは、真琴に気遣わしげに声をかけました。
「いえ、ヤワンさん。そんなに気にしなくて大丈夫ですよ。薬草の研究の話も、彼が無理を言ったわけではありませんから」
真琴は、柊平との接触を正当化するために、穏やかに応じました。
真琴の言葉に、レイルズは少し眉をひそめました。真琴が、ヤワンの前でまで柊平を庇うことに、焦燥を感じたのです。
レイルズは、ヤワンに可能な限り軽く聞こえるように、探りを入れることにしました。
「ヤワン殿。金井は、その…男として信頼できるのだろうか。あの、誰にでも声をかける様子を見ると、パーティー外でのトラブルがないか、我々としても心配で」
ヤワンは、レイルズの気持ちを察したように、笑いながら答えました。
「ああ、柊平のことですか。彼はあの調子ですから、女性友達は多いみたいですよ。見た目も派手でかっこいいし、誰にでも親切で優しい。話が面白い面もあって、ギャップがいいんでしょうね。でも、決まった相手はいないようですね。勘違いはさせないように気をつけているようです」
ヤワンは、柊平の「誰にでも優しいが、本命は作らない」という人物像を冷静に分析しました。
レイルズは、「決まった相手はいない」という情報に、少しだけ安堵を覚えました。しかし、すぐに別の疑問が頭をよぎりました。
「決まった相手は作らない…か。では、真琴に言いよって来るのは、本気なんですか?」
レイルズの問いは、先ほどよりも感情が滲んでいました。
ヤワンは、少し考え込むような仕草を見せました。
「うーん。私には、柊平の本心はわかりません。ただ、面白おかしく言っているうちは、まだ軽い気持ちかも知れませんね。口説き文句というやつです。ですが、彼にしては、女性を口説くのが珍しい言動だったんですよ。普段は、自分の興味のあるものにしか、熱意を向けませんから」
ヤワンの答えは曖昧でしたが、真琴とレイルズ、それぞれに違った形で安堵をもたらしました。
真琴は、「面白おかしく言っているうちは、まだ軽い気持ちかも」という言葉を聞き、「私の秘密を知るためであり、まだ本当に女性として熱烈にアプローチされているわけではない」と、胸をなで下ろしました。
一方のレイルズも、「まだ軽い気持ちなんだ」という言葉を「本命ではない」と解釈し、焦燥感を少しだけ抑えることができました。
しかし、レイルズは同時に、「女性を口説くのが珍しい」という言葉に、「真琴は、彼の珍しい本命になる可能性がある」という、新たな不安要素を認識するのでした。
二人のリーダーの探り合いは、真琴の秘密と、レイルズの独占欲を刺激する形で、静かに進行していたのです。




