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異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


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情報交換と秘密の共有

約束の日。真琴はレイルズからの心配の視線を背中に感じつつ、街で一番落ち着いた雰囲気の喫茶店へと向かいました。約束の場所には、既に金井柊平が座っていました。彼は黒い長髪を緩くまとめ、鮮やかな色のシャツを着ており、人目を引くほど整っていました。


「やあ、真琴さん!来てくれて嬉しいよ!もちろん、デートじゃなくて情報交換だよね!」


柊平は、わざと大声で「情報交換」と強調し、悪戯っぽく笑いました。


真琴は緊張しながらも彼の向かいに座り、すぐさま本題に入りました。


「金井さん、その、単刀直入に聞きます。どうして私が東方の国の人間だと分かったんですか?そして、あの煮込みの秘密まで」


柊平は、運ばれてきたこの世界の甘い飲み物を一口飲み、にっこり笑いました。


「そりゃ、簡単ですよ。俺も同じ匂いがするからね。俺も、あなたと同じ東方の国から来た。そして、あの匂いは、この世界でどこを探してもない、昆布と味噌の匂いですよ」


そして、周囲をちらりと見て、再び声のトーンを落とし、日本語で言いました。


「日本人同士、腹を割って話しましょう。真琴さん、あなたも、俺と同じく、死んでここに来たんだろ?」


真琴は全身の力が抜けるのを感じましたが、ストーカーの経験から来る強い警戒心が、彼女に核心を突く行動を取らせました。


「金井さん。私はストーカーに刺されてここに転移しました。だから、金井さんが私を同胞だと言って、一方的に近づいてくることが、少し、怖かったんです」


真琴は、喉の奥から絞り出すように尋ねました。


「もし、私があなたの好意を断ったら、皆に私が異世界から来たと告げると脅迫するつもりですか?」


真琴の問いに、柊平は心底驚いたような表情を見せました。彼はすぐに真顔に戻り、首を横に振りました。


「真琴さん、そんなことするわけないでしょう!」


柊平は、テーブルに身を乗り出して、真剣な口調で言いました。


「俺が、あなたが異世界から来たなんてことを、この世界の人間に言ったら、どうなるか。真っ先に俺自身が周りから奇異な目で見られる。異端だ、狂っている、頭がおかしいと。そんな面倒くさいことになるのは、俺自身がお断りですよ。俺は楽しく生きたいんでね」


彼は、自身の利己的な理由を正直に明かすことで、真琴の不安を取り除こうとしました。


「それに、俺はね、一人の女性としてあなたに興味があるんであって、脅迫して手に入れたいなんて、粘着質な趣味は持ってない。そこは、安心してくれ」


柊平の言葉は、彼の「さっぱりとした」「合理的」な性格を裏付けるものであり、真琴の心を縛っていた最も重い鎖を、カランと音を立てて外しました。


真琴は、張り詰めていた肩の力が抜け、小さく息を吐き出しました。ストーカーのような粘着質ではない、という柊平の保証は、彼女にとって何よりも重要でした。


「…そう、ですか。分かりました」


真琴の顔に、ごくわずかですが、安堵の表情が浮かびました。この瞬間、彼女は柊平に対し、「秘密を共有する唯一の人間」としての信頼を、ほんの少しだけ心を開いたのです。


真琴は、少し心を許したことで、自分の転移の経緯を話し始めました。


「…私は、一方的なストーカーに刺されて、ここに、異世界に転移しました。だから、レイさんは優しくて、頼りになる。彼の隣にいると、とても安心できるんです」


柊平は、真剣な顔で頷き、レイルズの話題を出しました。


「レイさんは、あの見た目で街じゃ浮いた噂一つない。身持ちが硬いんですよ。真面目すぎるというか。真琴さんみたいに可愛くて、料理も上手な女性が側にいるのに、何もアクション起こさないなんて。真琴さんも難儀だな、と親身に思ってますよ」


彼は、レイルズの「身持ちの硬さ」を批判することで、真琴との共感を深めようとしました。


「だからこそ、俺たち東方の国から来た孤独なお互い同士、分かりあえると思うんだけどなぁ。俺なら、真琴さんを不安にさせないし、もっと楽しいぞ?」


柊平は笑いながら言い寄ります。


真琴は尋ねました。


「金井さんは、どうしてここに?」


「俺?俺は、趣味のバイクですよ。改造した愛車を運転中に、カーブでスリップして、ド派手に事故って目が覚めたらここだった。バイクに乗る趣味よりも、もっと彼女とか作って楽しい思い出でも作っておけばよかった、って後悔しましたね。ははは!」


真琴は少し同情もしましたが、流されまいと牽制しました。


「あなたは、私と同じ境遇だと分かったから、親密な気持ちを持っただけで、私のことを、一人の女性として本当に気に入っている訳ではないんでしょう?」


柊平は即座に笑い飛ばしました。


「いやいや、真琴さん。それは違うな。俺が気に入ったのは、あなたの透き通った瞳と、内に秘めた強さですよ。もちろん、同胞だからこそ、その強さを真に理解できるのは俺だけだと豪語しますけどね!」


そして、色々話すうちに、柊平は真琴の魔法が気になりました。真琴の攻撃魔法がユーリよりも弱く、治癒と支援魔法だけの担当だと言う事。


「真琴さん。俺から見ると、あなたの魔法は、まだ未完成だ。ポーションの品質はすごい。でも、その攻撃魔法、今の威力じゃ、もったいない。もっと訓練すれば、ユーリちゃんの魔法にだって負けない、強い威力を持てるはずですよ」


柊平は、真琴の天恵が「世界の理を最適化する」力に近いと指摘し、それを支援や治癒だけに使うのは惜しいと訴えました。


「俺が先生になってもいいですよ?俺はオールラウンダーだけど攻撃魔法も強いし、何よりあなたの持つ力の根源を理解できる。あなたのポテンシャルを解放させてあげますよ」


真琴は、レイルズを隣で支えるためにも、自分の力を最大化したいという思いから、この提案を受け入れることにしました。


「…分かりました、金井さん。デートではないですが、レッスン、受けさせていただきます。ただ、レイさんたちには、『東方の魔術師から、薬草の知識を深く学んでいる』と伝えます」


柊平は満足げに笑い、「最高のレッスン」を約束しました。真琴は、レイルズへの報告内容を心に決め、不安と期待が入り混じる中、宿へと戻るのでした。

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