流星の雫(メテオ・ティア)の介入
レイルズが柊平の無遠慮な誘いに警戒心を露わにしたその時、食堂の入口からまずロアン・ザックリーズが慌てて駆け寄ってきました。
「シュウヘイ!やめろって言っただろ、いきなり他所のパーティーに絡むなって!」
ロアンは茶髪で金色の瞳を持つ剣士で、焦るあまり彼の瞳は微かに光を放っていました。
柊平は、緩く後ろでまとめた黒髪を揺らし、ロアンの制止に素直に応じます。
「ありゃ、ロアンか。ちぇっ、いいところだったのに。はいはい、この魔眼に睨まれたら、俺の面白いトークも止まっちまうからな!」
ロアンは謝罪をしようとしますが、その背後から、さらにがっしりとした体格の男性が落ち着いた足取りでやって来ました。パーティー『流星の雫』のリーダー、タンクのヤワン・イベルトです。
ヤワンは深く頭を下げ、レイルズたちに誠実に謝罪しました。
「申し訳ありません、『セイブライフ』の皆さん。リーダーとして、メンバーの行動を統制しきれていませんでした。この金井柊平という男は、少々人との距離感が近すぎるのです」
ヤワンは落ち着いた懐の深いタイプで、その謝罪には誠意が感じられました。
ヤワンは顔を上げると、柊平を指し示し、苦笑しました。
「しかし、彼は見た目こそ軽薄ですが、魔術師として頼りになる男であることは保証できます。技術は確かです。もしよろしければ、今後とも懇意にしてやって下さい」
ヤワンは、柊平の技術を保証し、「懇意に」という言葉で、暗に今後も交流を持つことを求めてきました。これは、真琴を巡るレイルズとの攻防を、公の場での「パーティー間の交流」という形に昇華させる、柊平の最後の仕掛けでした。
柊平は、ヤワンの言葉に調子を取り戻し、真琴に向かって顔を近づけ、再び陽気な笑顔を向けました。
「というわけで、リーダー公認です!真琴さん、この世界にいる者として、お互いのことをもっと知っておきませんとね!次の休みの日にでも、街の喫茶店でお茶でもどうですか?俺のパーティーは明日、一旦別の街へ向かうんで、再来週とか!お互い、あなたと同じ東方の国から来た魔術師として、情報交換しませんか!」
真琴は、柊平が「異世界から」という言葉を「東方の国から」と言い換えたことに安堵しつつも、先程の日本語の囁きで、その本質が同胞であることを突きつけられました。
レイルズは、ヤワンとロアンの謝罪を受けながらも、柊平の「東方の国から来た魔術師」という言葉と、真琴の動揺を見て、強い不快感と警戒心を抱きました。
「真琴、その日はパーティーの雑務が…」
レイルズは真琴を庇おうとします。
真琴は、このまま拒否すれば、柊平が自分の秘密をどこで、どのように暴露するか分からないという危機感を抱きました。さらに、同胞が他にどんな情報を持っているかを知る必要がある。
真琴は、レイルズの背後から一歩踏み出し、はっきりとした声で応じました。
「あの、レイさん。大丈夫です。私、その…情報交換でしたら、お話だけでも、お聞きします」
そして、柊平の方をまっすぐ見つめます。
「ただし、デートではないですけど。情報交換と、東方の料理の秘密について、お話するだけです」
柊平は、レイルズの制止を破って真琴が応じたことに満足し、満面の笑みを浮かべました。
「やった!ありがとう、真琴さん!ロアン、ヤワンさん、聞いたか?情報交換だよ!最高に楽しい情報交換にしてあげる!」
ヤワンはレイルズに申し訳なさそうに視線を送り、ロアンは柊平を引っ張ってその場を後にしました。
レイルズは、真琴の切羽詰まった様子を見て、それ以上追及することを止めました。彼は、柊平が真琴の「東方の国の秘密」という、自分の踏み込めない領域にまで侵入してきたことに、これまで感じたことのない焦燥を覚えるのでした。




