表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/49

予期せぬ事故

ユーリは、真琴との連携を強化することで、レイルズの望む「良いパーティーメンバー」という評価は得られました。しかし、レイルズが真琴に向ける個人的な眼差しや、夜の居間での親密な会話の光景は、ユーリの胸をざわつかせ続けました。レイルズが真琴を「心臓」と呼んだことは、ユーリの「推進力」という役割が、結局は真琴の安定の上に成り立っている、という事実を突きつけているようでした。


勝ち気なユーリは、この状況を打開するためには、戦闘の場で真琴の支援よりも、自分の推進力が上回る、決定的な瞬間を作り出すしかないと考えました。そして、レイルズが真琴の支援に頼り切れないような、予期せぬ危険を伴う状況こそ、自分が真の英雄になれる場だと判断したのです。


セイブライフは、地下深くへと続く、崩れやすい構造の古代遺跡ダンジョンに挑戦していました。


レイルズが先頭、ダリーがタンクを務め、真琴とユーリが後衛を務めるいつもの布陣。ユーリは、真琴の防御支援を要求しつつも、周囲の壁の脆さに注意を払っていました。


ある大きな広間に差し掛かったとき、真琴は天恵が持つ素材への洞察力とは別に、周囲の「流れ」が乱れているのを感じました。


「レイさん、待って!この広間の奥、地脈が不安定です。足元が危険かもしれません!」


真琴の警告は、ポーション作りの天恵とは関係ない、転移者としての直感でした。


しかし、ユーリは真琴の警告を聞くと、焦燥と決意の混ざった表情で、レイルズに提案しました。


「レイさん、大丈夫です!あの奥にいる魔物の群れ、真琴さんの支援を受けて、私が一気に殲滅します!崩れる前に終わらせましょう!」


ユーリは、真琴の警告を否定し、自分の圧倒的な推進力で危険を乗り越えるという、強硬な手段を選びました。そして、真琴の敏捷性強化魔法を受けると同時に、広間の中央へ猛スピードで突っ込みました。

ユーリが強力な連鎖魔法を放ち、魔物たちが次々と崩れ落ちる最中—―


ドゴォォォン!


真琴の警告が現実となり、広間の天井と、パーティーが立っていた入口付近の通路の一部が、激しい音を立てて崩落しました。


砂塵が舞い上がり、視界がゼロになります。


「ダリー!真琴!ユーリ!」レイルズの叫び声が響きます。


砂塵が収まると、パーティーは分断されていました。崩落した岩と瓦礫が壁となり、レイルズとダリーは広間の入口側で孤立。ユーリと真琴は、魔物の残骸がある広間の奥深くに残されていました。


「真琴!ユーリ!大丈夫か!?」ダリーが岩を叩く音が響きます。


「大丈夫です。でも、魔物がまだいます。」


真琴が答えました。


広間の奥にいるのは、息を切らしたユーリと、顔を青ざめさせた真琴だけ。しかし、魔物はまだ数体残っており、瓦礫の崩れた音に誘われて、さらに奥から新たな魔物が出現し始めていました。


ユーリは、自分が真琴の警告を無視し、崩落を招いたことに一瞬、動揺の色を浮かべました。しかし、勝ち気な彼女はすぐに頭を切り替えます。


(これはチャンスだ。私が、真琴を連れてこの状況を脱出すれば、レイさんに真琴よりも頼りになる、と証明できる!)


「真琴さん!魔物が来るわ!私は攻撃で道を切り開くから、あなたは私に治癒ポーションのバフと加速を集中させて!私たちは自力でレイさんたちのところまで戻るわよ!」


ユーリは、真琴の支援と治癒能力を、自分の推進力のために最大限に利用しようとしました。それは、真琴の命を守ることよりも、自分の功績を最優先する行動でした。


真琴は、ユーリの言葉に反射的に応じようとしましたが、瓦礫の向こう側から、レイルズの声が聞こえてきました。レイルズの声は、怒りや焦りではなく、冷静で強いリーダーの響きを帯びていました。


「ユーリ、真琴!聞け!動くな!無理に戻ろうとするな。ユーリの魔法は強力だが、今は瓦礫で視界が悪すぎる。真琴のポーションと支援魔法で、その場で防御を固めろ。時間を稼げ!ダリーと俺が、必ず道を切り開く!絶対に無駄な戦闘をするな!」


レイルズの指示は、「個人の功績」よりも「全員の生存」を優先する、セイブライフの理念そのものでした。


ユーリは、レイルズの言葉に再び動きを止めました。彼女は、レイルズに逆らえば、再びリーダーの権威を傷つけることになるのを恐れました。


真琴は、レイルズの指示が、自分の直感と「命を大事にする」という理念に合致していることを理解しました。彼女は、ユーリの功績優先の提案ではなく、レイルズの信頼優先の指示に従うことを決めました。


「ユーリさん!レイさんの指示です。防御支援と、周囲にいる魔物の動きを鈍らせる魔法をかけます!消耗を避けましょう!」


真琴は、レイルズが自分に送ってくれた信頼を裏切らないため、恐怖を押し殺して、冷静に、かつ正確に支援魔法の詠唱を始めました。


ユーリは、自分が望んだ「英雄になる状況」で、レイルズが真琴の支援能力と判断力を信頼したことに、内心で激しい動揺を覚えました。彼女は今、真琴の支援なしには、自分の推進力も制御を失うという現実を突きつけられたのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ