表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/49

新たな決意の味

真琴が新たな決意を胸に、自らレイルズに話しかけたこと。そして、レイルズが護衛を引き受けてくれたこと。その全てが、彼女に確かな自信を与えていた。


「ダリー、真琴、ユーリ。準備はいいか。今日は森の奥、『囁きの沢』周辺まで足を伸ばすぞ」


パーティーリーダーであるレイルズ、金髪の剣士が凛とした声で指示を出す。


「おうよ、真琴、ユーリ!俺たちの後ろにしっかりついてろ!」


タンク役のドワーフ、ダリー・キャサウェイが豪快に笑い、その横で、エルフのミリヤム・キャサウェイが愛嬌たっぷりな口調で夫を貶める。


「ダリーったら、大口叩いて!あなたこそ、真琴ちゃんに迷惑かけないようにね。ほら、真琴ちゃん、何かあったら遠慮なく私に言ってちょうだいね!」


「誰が迷惑かけるか、このチビエルフめ!」


「なんですって、この小石ドワーフ!」


二人の楽しげな応酬は、セイブライフの日常風景だ。


「はい、ミリヤムさん。ありがとう。行ってきます!」


真琴も自然と笑顔になる。


ユーリは、金色のショートカットを揺らし、活発な足取りで前に進む。


「よし、じゃあ、私も薬草をたくさん見つけなきゃね!」


彼女はレイルズのすぐ後ろ、真琴の斜め前という位置取りをキープした。真琴に無意識のプレッシャーを与える、彼女らしい巧妙な立ち位置だった。


森は深く、真琴とユーリはそれぞれポーションや薬剤の素材となる薬草を次々と発見していく。真琴は採取に集中しながらも、ユーリが時折レイルズに話しかけているのを感じていた。だが、以前のように萎縮することはなかった。


素材採取が順調に進み、一息入れるために、一同は開けた場所で昼食をとることにした。


「さあ、お楽しみのお弁当タイムだ!」


ダリーが声を上げる。


真琴はアイテムボックスから、昼食を次々と取り出した。メインは、ピザパンと、具材がたっぷりと入ったクリームシチューだ。ピザパンのベースには、真琴が以前トマトの類似種から作り置きした自家製のトマトソースをふんだんに使っている。


「おお!これは美味そうだ!」


ダリーが目を輝かせる。


真琴は以前元の世界の調味料を出してしまい、咄嗟に「東方の故郷の味」と苦しい説明をした事を思い出し、少し笑みがこぼれる。


「いただきます」


レイルズが口にして、ゆっくりと咀嚼した。


「…真琴。このシチュー、以前よりも深みがある。パンも、このトマトソースが効いているな。パンとチーズとベーコン、野菜の組み合わせもベストマッチだ」


レイルズは煙ったような緑色の瞳を細めて微笑んだ。


「本当に美味しい。ありがとう」


その穏やかな、心からの感謝の言葉に、真琴の胸は温かくなった。


「このトマトソース、本当に美味しいね。真琴さん、料理上手なの羨ましいな」


ユーリも口にはしたが、その言葉にはどこか空虚な響きがあった。以前、真琴が


「今度一緒に作りましょうか?」


と誘った時、ユーリは


「うーん、私、食べる方が専門で」


と乗り気でない様子だったのを真琴は思い出す。ユーリは、外で活発に活動することに重きを置くタイプなのだろう。


昼食後、帰路につこうとしたその時、魔獣の群れに遭遇した。しかし、レイルズの剣、ダリーの堅牢な守り、そして真琴とユーリの魔法が連携し、それは難なく蹴散らされた。


安全圏まで戻る道すがら、真琴は意を決してレイルズに話しかけた。


「レイさん、あの、さっき集めた『月光草』なんですけど、今回は治癒ポーションよりも、支援魔法の持続力を高める薬剤に使うのはどうでしょうか?」


「支援魔法の持続力、か。ナエルがいなくなって、その部分は手薄だからな。…いい案だ、真琴」


レイルズは真剣な顔で頷き、真琴の意見に耳を傾けてくれた。素材の利用法について、二人はしばらく歩きながら話し合った。


真琴は、ふとユーリの様子を窺ったが、彼女は何も割って入ってこなかった。ただ、少し離れたところでダリーと話しながら、二人を見つめる藍色の瞳の奥に、何か冷たい光を宿しているように見えた。だが、真琴は視線をすぐにレイルズに戻し、会話を続けた。


宿に戻った真琴とユーリは、集めた素材でポーションや薬剤を次々と作り上げた。一部はパーティーの取り置き分とし、残りをまとめて商店に売却した。


売上金は、二人のおかげでかなりの額になったため、真琴とユーリが少し多めに受け取り、残りを皆で分けた。その夜は、その成功を祝し、宿屋の食堂でささやかな祝杯があげられた。


打ち上げの席では、やはりユーリが積極的にレイルズに話しかけた。


「レイさん、次の目的地はどこがいいですか?私は、火山の近くにあるという噂の、あの珍しい鉱石を見てみたいです!」


「ユーリ、先走るな。安全第一だ」


レイルズはたしなめるが、その視線は優しい。


真琴は、グラスを握りしめた。緊張で喉が渇く。しかし、ここで引っ込んではいけない。


ユーリとレイルズの会話が途切れた、僅かな「間」。真琴は勇気を振り絞って口を開いた。


「レイさん。その、次に向かうダンジョンについて、ナエルさんに教えてもらった支援魔法の組み合わせがあるんです。もし良かったら、今度改めて、その戦略について話し合ってみませんか?」


レイルズは、真琴の方を向いた。そして、優しく、安心させるように微笑んだ。


「もちろん、真琴。お前の知識と努力は、セイブライフにとって大きな力だ。明日の朝、ゆっくり話そう」


その夜、真琴はベッドに入りながら、心の中で安堵の息をついた。


(今日は、大丈夫だった。ユーリさんのプレッシャーにも負けずに、レイさんと話すことが出来た)


少し安心した一日だった。しかし、真琴は知っていた。活発で勝ち気なユーリが、このまま引き下がるはずがない。この穏やかな一日は、嵐の前の静けさなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ