表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/49

完璧な魔術師と揺れる後衛

レイはユーリの採用をまだ正式に決めていなかったが、実力を見極めようとして、簡単な討伐依頼でダンジョンへ向かった。


ダンジョン内でのユーリの仕事ぶりは、事前に聞いていた通り、いやそれ以上に完璧だった。


ユーリは攻撃魔法に長けており、炎の魔術は、真琴の『火球ファイアボール』よりも遥かに早く、高熱で敵を一掃した。さらに、回復・支援魔法の詠唱も短く、的確に前衛をフォローする。


「レイさん、右の敵、私が炎で足止めします! 真琴さん、その隙に左に『光の治癒』を!」


ユーリは、レイルズの指示を待つだけでなく、真琴の動きを予測し、積極的に連携を促してきた。その動きは淀みがなく、まるで長年組んでいるパーティーメンバーのようだった。


レイルズもダリーも、ユーリの戦闘能力とチームワークへの意識の高さに感心した。


「ユーリ、やるじゃないか! この調子なら、俺たちセイブライフは盤石だぜ!」


ダリーが豪快に笑う。


「ああ。動きに無駄がない。真琴も、ユーリと組んでやりやすいだろう?」


レイルズも、真琴の働きを気遣いつつ尋ねた。


真琴は、緊張した笑顔で頷いた。


「はい……ユーリさんの、魔術はすごいです」


真琴の言葉は、率直な賞賛だったが、同時に、自分の居場所を脅かされていることへの焦りも含んでいた。


ユーリは、戦闘での立ち回りだけでなく、休憩や移動中の態度も、男性陣にとって心地よいものだった。


「レイさん、お疲れでしょう? ポーションをどうぞ。私が作ったものよ、市販品より効くわよ」


ユーリは、さりげなく自作のポーションをレイルズに手渡し、その際、レイルズの視線を自分に引きつけるような表情を向ける。


真琴は、ユーリがレイルズにポーションを渡す間、自分の持っている精製ハイポーションを、アイテムボックスから出すことさえ躊躇してしまった。


「ユーリ・メリバ」。彼女は、実力、積極性、そして女性としての魅力、全てにおいて真琴を圧倒していた。


結局、ダンジョンへの行き帰りの道中も、皆で食事を共にする打ち上げの席でも、真琴は一歩下がったまま、ほとんど口を開くことができなかった。


その日の打ち上げでも、真琴はユーリとレイルズの楽しげな会話から距離を置いて、静かに食事をしていた。


ミリヤムは、つわりで食欲がなく、あっさりとしたスープを軽くすすっている状態だったが、そんな体調の中でも真琴を気にかけた。


「真琴さん。今日は、あまり食べていないわね。このスープ、胃に優しいから、もう少しどう?」


ミリヤムが優しく真琴に声をかける。


「あ、ありがとうございます、ミリヤムさん。いただきます」


真琴は、小さく会釈してスープを口にした。


ユーリは、レイルズに


「ねぇ、今度、私のおすすめのワインを奢らせてくれないかしら?」


と誘いをかけており、真琴とミリヤムの会話には気づいていないようだった。


真琴は、体調の悪いミリヤムにまで心配をかけてしまったことに、胸が締め付けられる思いがした。


(私、ナエルさんに「もう独り立ちしなさい」って言われたのに。ユーリさんが来ただけで、こんなに怯んで、ミリヤムさんまで心配させて……)


真琴は、自分の引っ込み思案な性格と、ユーリに一歩も踏み出せない臆病さに、激しい自己嫌悪に陥った。自分の得意な魔法の腕で、自信を持とうと決めたばかりなのに、また過去の自分に引き戻されている気がした。


打ち上げが終わり、自室に帰った真琴は、すぐにベッドに横になった。天井を見つめながら、真琴の頭には、ナエルの顔が浮かんでいた。


(ナエルさんに、話を聞いてもらいたい……)


ナエルなら、この状況を笑い飛ばすか、あるいはユーリに負けないような大胆なアドバイスをくれるだろう。そして何より、真琴の心の一番深いところにある、レイルズへの特別な感情と、自分の弱さを、すべて理解してくれたはずだ。


真琴は、レイルズの傍で、安心して、そして対等に並び立ちたいと強く願った。その願いは、ユーリという強力なライバルの出現によって、さらに切実なものとなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ