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異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝久実


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パーティーの転換期

ダリーの鎧が修理に出されている間、『セイブライフ』は近くにある比較的安全な森で、日々の活動を続けることになった。この森は主に薬草や調理用の香草が豊富であり、危険度の低い獣しか生息していない。


真琴は、この森の環境を活かし、採取した薬草でポーションやハイポーションを精製して商店に卸すことにした。


獣との戦闘はあったものの、レイと真琴、ミリヤムの三人がいれば敵ではなかった。特に真琴は、レイの護衛がある安心感から、魔法の精度と反応速度がさらに向上していた。


数日間の活動で、真琴は大量のポーションを精製し、それを街の商人に売却した。売上を山分けにしようとしたが、皆は遠慮した。


「俺たちはただ護衛しただけだ。ポーションを生み出したのは真琴の技術だろう」


レイルズが言う。


「そうよ、真琴さん。その技術が私たちの命を守るんだから、対価は真琴さんが多く取るべきよ」


ミリヤムも賛同する。


結果として、ポーションは真琴の取り分が少し多めに設定され、残りの素材はギルドに売却して全員で公平に分配した。真琴は、自分の得意分野で仲間から認められたことに、また一つ自信を得た。


その日の夜。素材集めの成果を祝うため、いつもの食堂で打ち上げが開かれた。


ダリーは修理に出した鎧の分まで飲む勢いで、上機嫌だ。レイルズはほどほどにエールを飲みながら、真琴と今日の素材の話をしていた。


しかし、ミリヤムの様子がいつもと違った。


「ミリヤム、どうした? 今日はエールを飲まないのか?」


ダリーが、珍しく大人しい恋人を見て首を傾げる。


「ええ……なんだか、今日は匂いがちょっと強すぎるわね。それに、少し胃がむかむかするの」


ミリヤムは、上品に口元を抑えながら、珍しく食欲がない様子だ。


「体調が悪いのか?」


レイルズが心配そうに尋ねた。


「疲れたんじゃないかしら? 森での活動が続いたもの」


ナエルが抜けた分、ミリヤムの支援の負担が増えていた。真琴が提案した。


「私のポーションで、回復できそうですか?」


「ありがとう、真琴さん。でも、疲労とは少し違う気がするの。なんだか、空腹なのに食べたくない、変な感じ」


皆がミリヤムの体調を気遣い、その日の打ち上げは早めに切り上げられた。


翌朝。不安に思ったダリーが、無理矢理ミリヤムを連れて街の医者にかかった。レイルズと真琴は、宿で二人の帰りを待った。


数時間後、ダリーとミリヤムが帰ってきたが、二人の様子はあまりに極端だった。


ミリヤムは、頬を染めて、どこか浮かれたような、幸せそうな表情をしていた。一方、ダリーは、宿の扉を蹴破る勢いで飛び込んできた。


「レイ! 真琴! ミリヤムが! ミリヤムが妊娠したぞぉぉぉっ!!」


ダリーは、両手を天に突き上げ、宿の廊下中に響き渡るほどの雄たけびを上げた。


「俺の赤ちゃんが! 俺の息子か娘が生まれるんだ! くそっ、俺は父親になるんだ!」


ダリーは興奮のあまり、ミリヤムに飛びつこうとした。


「ちょっと! ダリー! お腹に触らないでって言ってるでしょう!」


ミリヤムは、優雅な表情を保ちつつも、ダリーの頭を力強く押しのけた。


「まだ本当に初期なんだから、もう少し落ち着きなさい、この脳筋ドワーフ!」


レイルズと真琴は、突然の朗報に、驚きと喜びで顔を見合わせた。


「おめでとう! ダリー、ミリヤム!」


レイルズが心から祝福した。


「ミリヤムさん、おめでとうございます! お体に気をつけて!」


真琴も、目頭が熱くなるのを感じた。


ダリーは興奮が収まらない。彼はミリヤムを抱き上げ、くるくると回った。


「ああ、ミリヤム! 今から俺は、世界で一番強いドワーフだ! 赤ん坊が生まれるまで、お前が欲しがるものは全部獲ってくる! 最高のベビーベッドを、アダマンタイトで作ってやる!」


「駄目よ! アダマンタイトは硬すぎるわ! 赤ちゃんの体が痛むでしょう!」


ミリヤムが、愛するドワーフの暴走を止める。


「なんだと!じゃあ、何がいいんだ! 赤ん坊に俺の髭を触らせてやるか? この最強の髭を!これで魔物も逃げる!」


「自分の髭を自慢しないで! 赤ちゃんが怖がるわ!」


二人の、命がけの戦い(バカップル喧嘩)が繰り広げられたが、その内容は、これから生まれてくる新しい命への、深い愛情に満ちていた。


しかし、喜びもつかの間、レイルズはリーダーとして現実的な問題に直面した。


「ミリヤム、君は今後、パーティーでの活動は休止してもらうことになる」レイが真剣な表情で告げた。「いくら後衛とはいえ、ダンジョンでの不測の事態は、母体にとって危険すぎる」


「ええ、わかっているわ」


ミリヤムも、穏やかに頷いた。


「私がいなくても、レイと真琴さんがいれば、ダリーを止めることはできるでしょう」


「待て! ミリヤムがいなくなったら、誰が俺の身体の隅々まで治癒してくれるんだ! 俺は、ミリヤムがいないと、すぐに怪我を悪化させるドワーフだぞ!」


ダリーが慌てて訴える。


「これからの事は、真琴一人に、攻撃魔法と治癒魔法、支援魔法のすべてを担わせるのは、あまりに負担が大きい。よって、セイブライフは、新たな後衛の魔術師を募集する」


レイルズは結論を出した。


ミリヤムが、寂しそうな真琴の手に触れた。


「大丈夫よ、真琴さん。すぐに、あなたの素敵な相棒が見つかるわ。私は、外から二人を応援しているわね」


真琴は、寂しさと、期待と、そして新たな責任感を抱きながら、力強く頷いた。セイブライフは、新たなメンバーを迎える、大きな転換期を迎えたのだった。

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