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異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝 久実


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祝福の結婚式

数日後、ナエルと鍛冶師アルベルトの結婚式が、街の教会で執り行われた。街で名の知れた冒険者と、人気のある鍛冶師の結婚とあって、教会には多くの人々が祝福に駆けつけた。


ナエルは、白いローブを基調とした、落ち着いた雰囲気のウェディングドレスに身を包み、いつも以上に優雅で美しかった。隣に立つアルベルトは、真面目そうな顔立ちで、ナエルを優しく見つめていた。


セイブライフのメンバーは、皆で正装して参列した。


ダリーとミリヤムは、この時ばかりは喧嘩もせずに厳粛な表情を保っていたが、新郎新婦が誓いのキスを交わした瞬間、ダリーが


「お幸せにな!」


と大声で叫び、ミリヤムに肘で突っ込まれていた。


式が終わると、一同は感慨に耽った。


「いいお式だったな……。ナエルが幸せそうで、本当に良かった」


レイルズが、静かに目を細めた。


「ええ。アルベルトさんは、ナエルを心から愛しているのが伝わってきました」


真琴も、思わず涙腺が緩む。


披露宴の席で、真琴はナエルに、心を込めて作った最高純度のハイポーションを渡した。


「ナエルさん、今まで本当にありがとうございました。私、ナエルさんに教えてもらわなかったら、きっとまだ、動けないままでした」


真琴は、込み上げてくる感情を抑えきれず、涙声になった。この異世界で初めて、心から頼れた女性であり、先生だったナエルの旅立ちは、真琴にとって寂しいものだった。


「これは、お祝いです。レイさんと一緒に材料を取りに行った、最高に効くポーションです。アルベルトさんのお怪我にも、きっと役に立ちます」


ナエルは、優しく真琴の頬の涙を拭った。


「ありがとう、真琴。あなたの成長と、このハイポーションが、私にとって一番の宝物よ。自信を持って。あなたはもう、立派な魔術師よ」


次に、ダリーとミリヤムが、大きな包みをナエルに差し出した。


「ナエル! これは、俺たちがダンジョンで死ぬ思いして集めた、最高の宝石類だ! これで、アルベルトの店を一番派手に飾り立てろ!」


ダリーが鼻息荒く言う。


「そうよ、ナエル。この中には、私とダリーの喧嘩の数だけ、貴重な輝石が入っているわ。夫婦喧嘩したら、これを見て私とダリーの罵り合いを思い出して、すぐに仲直りするのよ!」


ミリヤムが皮肉たっぷりに言った。


「なんだと!俺たちのは愛の喧嘩だ!」


「あら、愛の罵り合いね」


ナエルは、彼ららしい贈り物に、堪えきれずに笑い出した。


最後に、リーダーであるレイルズからのお祝いだ。


「ナエル。パーティーの代表として、金一封と、これを受け取ってくれ」


レイルズが渡したのは、手のひらサイズの美しい魔道具のランプだった。透明なガラスの中に魔力が込められており、灯りを点すと、天井にまるで本物の星空が映し出され、心地よいアロマの香りが部屋に満ちる。


「これは……『夜の安息』の魔道具ね。ありがとう、レイ」


「君には、本当に感謝している。君がいたから、セイブライフはここまで来られた。新しい生活で、これを見て、心安らかに過ごしてくれ」


レイルズの瞳には、かつての親友を思いやるような、深い感情が込められていた。


二次会は、お酒も入り、大いに盛り上がった。しかし、ナエルの旅立ちの場であるためか、いつもよりは少しよそ行きの笑い声が飛び交う、温かい宴だった。


真琴は、レイルズの隣で、少しだけワインを飲んだ。レイルズは真琴のグラスが空かないよう、常に気を配ってくれていた。


賑わいが最高潮に達した頃、真琴はそっとグラスを置き、静かに決意を固めた。


(ナエルさんは、もう、いない。これから、私が、セイブライフの魔術師として、レイさんや、皆を守る後衛にならなくちゃ)


訓練は十分積んだ。トラウマも、完全に消えたわけではないが、制御できるようになった。真琴は、レイルズの命を最優先するという志を、自分の使命として受け継ごうと思った。


(私は、精製魔術で皆の命綱になる。そして、戦闘魔法で、レイさんたちの背中を守る。ナエルさんのように、立派に、独り立ちしなくちゃ)


真琴の瞳には、初恋の面影を追う恋心だけでなく、セイブライフのメンバーとして、そしてレイルズの背中を守る者としての、強い意志の光が宿っていた。

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