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異世界で初恋の人とそっくりな人に出会い冒険を始めた魔法使い  作者: 輝久実


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素材集めとピクニック

翌週の休日。ナエルの結婚祝いとして最高純度のハイポーションを作るため、真琴は材料集めに時間を費やしていた。特に希少な薬草『銀月のぎんげつのつゆ』は、人里離れた森の奥深くにしか自生していない。


真琴は、その材料採取の護衛を、レイルズに頼むことにした。


「レイさん、お願いがあります。ナエルさんに贈るハイポーションの材料を取りに行きたいのですが、一人では少し危険な森なので……護衛をお願いできませんか?もちろん、報酬は支払います」


「報酬なんて要らない。真琴一人を危険な場所に行かせるわけがないだろう」


レイルズは即座に承諾した。


「『銀月の露』だろう?場所は把握している。いつ行く?」


真琴は胸が熱くなった。彼にとって、自分は守るべき仲間なのだと改めて感じた。


「明日、朝早くから行きたいです」


「わかった。準備しておく」


翌朝、真琴は朝早くから台所に立ち、二つのお弁当を用意した。異世界に来てから初めて、本格的な料理に腕を振るった。


「レイさんの好みがわからないから、無難なものにしたけど……喜んでくれるかな」


真琴が作ったのは、異世界の食材を使いつつも、日本の技術が光るサンドイッチ弁当だ。中身は、香草で炒めた肉と、刻んだ野菜、そして……。


「真琴、出発するぞ」


宿の外に出ると、レイルズが剣を腰に、軽装で待っていた。真琴は、風呂敷に包んだ弁当箱と水筒を見せた。


「あの、お弁当を作ってきました。お昼に、森でピクニックしませんか?」


レイルズは目を丸くした後、優しく微笑んだ。


「まさか、真琴の手料理が食べられるとはな。ありがとう。楽しみだ」


レイに護衛されながら森の奥へと進むと、レイルズの知識と戦闘技術のおかげで、真琴は一度も危険に遭遇することなく、目的の薬草『銀月の露』を無事に採取することができた。


採取を終え、二人は小川のせせらぎが聞こえる静かな木陰に腰を下ろした。


「任務完了だな」


レイルズが剣を休ませ、真琴に笑いかけた。


「はい! レイさんのおかげです。本当に助かりました」


真琴は持ってきた弁当を広げた。レイルズは、切り分けられたサンドイッチを見て、目を輝かせた。


「これは……見たことのない料理だな。パンの間に、具材を挟んでいるのか」


「はい、サンドイッチ、というものです。どうぞ」


レイルズは大きな口を開けて、サンドイッチを頬張った。彼の表情が、一瞬で驚きと喜びに変わる。


「う、美味い! なんだこれは!? 肉と野菜の味を、この白い練り物が、一つにまとめて濃厚にしている!」


レイルズが絶賛したのは、真琴が異世界の卵と油を使って、日本での記憶を頼りに再現したマヨネーズだった。


「この白い練り物は、何からできているんだ? 驚くほど豊かな風味だ」


「あ、これは……『東の国の故郷に伝わる、卵を使った特別なソース』、とでも言っておきますね。私が独自に配合したものなんです」


真琴は、マヨネーズという名前を出さず、曖昧に誤魔化した。


「東の国か……。真琴の故郷の味は、素晴らしいな。これは、このまま食べてしまうのが惜しいくらいだ」


レイルズは、本当に美味しそうに、そして嬉しそうに食べてくれた。


真琴は、その様子を見て、料理を作った甲斐があったと、心から嬉しくなった。レイルズが、自分の作ったものを純粋に褒めて喜んでくれることが、何よりも嬉しかった。


ピクニックを終え、帰路についた二人の前に、突如、俊敏な動きの『フォレストウルフ』が二体、飛び出してきた。


「真琴、下がれ!」


レイルズは即座に剣を抜き、真琴を背後に庇った。ウルフは、獲物を見つけた飢えた目をしていた。


レイルズは素早いウルフの攻撃を一つは剣で受け止め、もう一つの突進を体をひねって避けたが、その際、ウルフの爪がレイルズの左腕を浅く裂いた。


「チッ……!」


レイルズが苦痛に顔を歪める。


しかし、真琴はもう固まらなかった。レイルズが目の前で傷ついたことに、恐怖よりも、「守らなければ」という強い思いが勝った。


「レイさん! すぐに治します!」


レイルズがウルフを剣で牽制し、距離を取らせた一瞬の隙に、真琴は即座に『光の治癒』の魔法をレイルズの腕に施した。同時に、ウルフの足を狙って『石礫』の魔法を放つ。


治癒魔法は瞬時に傷を塞ぎ、レイルズの動きを鈍らせなかった。石礫を避けたウルフは、真琴の戦意を見て、警戒を強める。


「助かった! 真琴、いい判断だ!」


レイルズは真琴の素早い反応を褒め、ウルフが体勢を崩した一瞬の隙を逃さず、剣を振るい、二体を一気に仕留めた。


ウルフが倒れると、真琴は駆け寄り、レイルズの左腕に触れた。もう傷はなかった。真琴は安心して、


「良かった」


と囁いた。


「ありがとう、真琴。君は、もう大丈夫だな。前のように固まらなかった」


レイルズは、真琴の頭を優しく撫でた。


「はい。レイさんが、私を、守ってくれると信じられたから……動けました。それに、私もレイさんを守りたい、と思いましたから」


真琴は、自分の成長と、レイへの強い信頼を実感した。手に入れたばかりの『銀月の露』を大事に抱えながら、二人は連れ立って、宿へと帰っていった。


あとは、ナエルに贈るハイポーションを作るだけだ。

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